目白からの便り

キャリアデザインの作り方・・・キャリア設計の3原則

この8年間、大学で留学生向けの講義科目にキャリアデザインの講義を積み重ねてきた。日本企業における人事・雇用環境を理解した上で、いかにキャリア設計を合理的なステップで構成するかという視点で講義を構成してきた。講義の最後には、学生一人ひとりが、”BusinessIPlan”(ビジネス アイ プラン 「私の事業計画書」)を作成する。また、日本人学生向けの「経営論」の講義でも、企業における経営戦略策定のロジックと個人のキャリア設計のロジックの融合の価値について学生に伝えるプロセスを組み込む。長い企業の人事経験と雇用流動化が急速に進むリアルなキャリア市場における転職支援の経験から、できる限り迷走しないキャリア設計のスキルを個々人が持ち合わせるべきだと考える。

キャリアコンサルタントとしてキャリアの節目に向き合う方への支援の現場で考えさせられることがある。私が担当する転職を考える方の中には企業の経営企画の重責を担う方もいる。彼らとお話をする中で驚くことは、会社の業務で経営計画を立案推進する際はきわめて合理的な判断を行うにもかかわらず、ご自身のキャリアになると途端に博打のような選択肢を選ぼうとする。50代後半に至った方でも、これから就活を始めようとする準備前の大学3年生のような思考でご自身の今後を考えようとする。その度に、キャリアにおける主戦場となるキャリアドメイン(領域)やキャリア競合者との相対的優位性分析などの外部環境分析、ご自身の積み上げられてきたキャリアリソース(強み、資源、コア・コンピタンス)に関する積極的な評価に基づく内部環境分析を行うことを促し、賭け事の世界から引き戻す。

大学の講義で、キャリアについてお話しをする冒頭のスライドに、「キャリア設計の3原則」を使う。そのスライドには以下のことを記している。
1.     キャリアは取引される(商品価値として希少性のあるキャリア)
2.     キャリアを買い手の視点で考える(押し売りしない)
3.     キャリアは総力戦である(個人を超え、潤沢で良質な人的関係を築きあげる)

経営のロジックの中では、あたりまえのような概念なのだが、ご自身のことになると、そうはいかないようだ。だから自分のような役割も必要なのかとキャリアコンサルタントという職業としての価値を再認識する。精神的に追い詰められ、正常な思考ができない方に対して、彼らの今の感情を肯定的に受容しながら、徐々に冷静な判断ができる環境へ忍耐強く伴走することをこれからも続けていきたい。

今日一日が良い一日となりますように、悲しみと困難、不安に向き合っている方に希望がありますように。良い週末をお過ごしください。新しく始まる一週間が皆様にとって豊かな一週間でありますように。

2022年5月27日  竹内上人

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