弊社コンサルタントのゆうよう子さんが、株式会社リクルートキャリアが主催するGOOD AGENT AWARD 2017 特別賞を受賞しました。
GOOD AGENT AWARDとは
株式会社リクルートキャリア主催。一人ひとりがイキイキと働く社会を実現するために、プロ意識に基づいて、人が介在しなければ生み出せなかった高いレベルのマッチングを成し遂げたコンサルタントを称える賞。2017年は200件以上の応募の中から、金賞5名、特別賞3名が表彰され、その一人に、マッケンキャリアコンサルタンツのコンサルタント、ゆうさんが選ばれました。
では、どのような転職支援を行って今回の受賞に至ったのか、そこにどんなストーリーがあったか、本人へのインタビューも交えてご紹介します。
企業側の希望条件とは大きく異なる人材を正社員雇用としてマッチング。求職者に自身のライフマネジメントを考えるきっかけを与えたのが転職成功の鍵になった。
今回の求人クライアント(人材を募集する側の会社)は、美容・健康機器の分野において高い技術と開発力を持つ企業。高品質な商品を展開し、表参道ヒルズに初となるフラッグシップ店をオープンさせる計画をもっていた。ここから一気に「直営店舗販売」を主軸にした「グローバル展開へ」という、まさに会社の社運をかけた一大投資事業を目前に控えていた。
そして、その出発点となる「直営第一号店」の店長を募集。当然、企業側から提出された求人条件は高度なものだった。
・年齢25歳~35歳。
・ビューティーブランド直営店の経験もしくは付加価値商品の販売経験がある。
・美容に関する専門知識がある。
・売上責任者として店舗全体の売上を前年度よりも伸長させた実績を持っている。
・人材育成の実績がある。
・部下を店長・副店長へ昇進させたことがある。
・数字に強く、数字と施策を組み合わせて売上設計ができる。
・顧客づくりができる能力がある。
さらに資質として、グローバル展開を見据え従来型の消費財の接客ではなく「顧客との密接なリレーションを構築できる接客スキルとノウハウ」を有し、「ブランド価値をアピアランスで表現できる人材」であること。(*求人条件の一部を抜粋)
—この条件をどう感じましたか?
「高いハードルだと思いました。この条件をすべて満たす人材と出会うことは難しいだろう、というのが正直な感想でした。ブランド直営店のマネージメントの経験があり、責任者として店舗全体の売上を上げた実績があり、部下を店長・副店長へ昇進させたことがあって、数字に強い。さらに、グローバル展開、ブランド表現にもノウハウを持つ人材。これはとても高度な条件です。
しかし、会社の転換期に関わる重要なポストの募集ですから、その水準の条件が必要なことは理解していました。企業の想い、情熱が募集条件に現れるのは当然です。
わたしたちコンサルタントとしては、そこにどう切り込むか、募集条件に文字としてまだ浮き上がってない大事な要素、まだ顕在化していないマスト条件のようなものを見い出せるかがこのマッチングを成功させる鍵だと思いました」
—具体的にはどのような提案を?
「具体的には、まず、ただ店舗経験がある、売り上げの販売実績を持っている、高い接客技術を有する人材であればクライアントが求める条件を満たすのかということを考えました。そこには募集条件にまだ表出されていない資質条件があるのではないかと思いました。
例えば、すでに直営店舗を持っていて、新たに店舗展開するといった多店舗展開での新店舗展開業態であれば、過去のマーケティングデータもあり、「コスト」よりも「売上」という視点でマネジメントすればいいと思うのですが、こちらの企業にとっては、今はまだそのナレッジ(経験による知識)はないので、コスト意識、顧客意識、改善意識や店舗のイメージといった視点を持ち、企業と一緒に成長していきたいという気持ちが持てる人材。つまり、企業側が求める1店舗管理者としての成功体験保持者というよりは、『経営者視点』から、売上、利益、コスト等、前例がなくても仮説を立てることができる人材が必要だと思いました」
—はじめからそのような着想を持っていたということですか?
「いえ。求人票を初めて見たときはそういうことは考えていませんでした。今回の求職者(以下、Aさん)と出会い、やり取りするうちにそう感じるようになったというのが正直なところです」
—(差し支えない範囲で)Aさんの経歴を教えてください。
「大手アパレルメーカーで25年以上正規雇用として働いていた女性です。店長への昇格、ブランドマスターとして複数店舗の統括と事業に関わり、第1 エリア関東4ブランドのエリアマネージャーに配属されるなど重要ポジションを任され、現場経験をベースにプレイングマネージャーとして様々な経験を持っています。
Aさんはシーズン発注品展開と顧客管理、そしてイベントを企画、実行することを得意とし、お客様のニーズを掻き立て提案することで売り上げを伸ばした実績もあり、アパレルの分野でかなり高度なキャリアをお持ちの方でした。
そのような実績から、現場統括時にはマネジメントで社内外問わず一定の評価を受けていたようです。
さらに、人材育成です。経歴を聞いて、Aさんは人と関わりながら、部下たちを成長させていくことができる方だということが分かりました。そして相手の話に耳を傾け、じっくり話を聞ける方です。そのような方なので、Aさんが大手アパレルメーカーで「現場統括」という重役を任されていく様子は容易に想像できました。実際、部下に悩みを相談されることが多かったとご本人もおっしゃっていたように、組織からも部下からも信頼が厚かったのです。
彼女はその後、個人事業主として独立しています。人材育成、社員のメンタルサポートのノウハウを活かして、自分でメンタルヘルスの資格を取得して、職場での人間関係の悩みを解決するセラピストとして起業しました」
—そんなAさんとはどのように出会ったのですか?
「実は、Aさんとは転職を想定して出会ったのではなく、別の相談を受ける形で出会いました。
私は弊社(マッケンキャリアコンサツタンツ)でコンサルタントを務める傍ら、経営者の方を対象に、服装や髪型、立ち居振る舞い、話し方など印象に関することをアドバイスする会社『GRATIA(グラティア)』の代表としてイメージコンサルティングを行なったり、その様子をSNSで情報発信しています。そのSNSを介して、連絡を受けました。私のFacebookをAさんの知人が見て、相談に乗ってくれませんか?と私に連絡をしてこられたのが最初のきっかけでした。その知人の方は以前からAさんの相談に乗っている方でした」
—起業家として一歩を踏み出したAさんに転職を勧めたきっかけはどのようなことからだったのですか?
「Aさんはクライアントには苦労がなかったようですが、ご自身の経営スタイルがうまくつかめずに悩まれていました。自分の思うようなビジネスができずに、時には深く悩まれることもあったようです。
よくよくAさんのお話を伺って見えてきたのは、彼女は事業内容の領域のスキルはすでに十分あるものの、経営管理に必要な部分、つまりAさんの才能とスキルを将来最大限に活かすために求められる財務的側面の経験が不足しているということでした。これはあくまで私の感想に過ぎませんが、たとえ遠回りになったとしても、組織全体を統括する立場として再就職する道をとってさらに掘り下げたキャリアストーリーをもつことはご本人にとって大きなメリットがある、そしてその千載一遇のポストが目の前にあると感じ、転職を提案しました。
一方求人企業にとっても、Aさんのキャリアは魅力的なはずです。Aさんはファッション業界での高い実績があり、ひとを育てるプロであり、未知の分野に果敢に挑戦する行動力もあり、経営者目線を持っている。そんな人材が今回の求人条件にとてもマッチすると私は思いました。
つまり、Aさんにとってはこのまま一人で事業を続けるよりも、組織で自分の得意なことを発揮することが価値高いですし、一方求人企業はひとりで不確かなモノに挑戦して投資していけるスキルのある人材は、実績のない分野へのチャレンジに本質的に求められることであると感じました。ここに、双方にまだ顕在化されていないマッチングポイントがあると感じたのです。将来的にAさんの培ってきた資質とクライアントとの間でシナジーが生まれると思いました。それでAさんにこの応募を持ちかけました」
—Aさんはそれに対してどんなご感想をお持ちでしたか?
「最初は私の提案には驚いたご様子でした。一度起業して再び再就職というのは敬遠されがちです。一般的にはそのような傾向がある中で、Aさんも同様に起業の道を歩みたいという気持ちも模索していました」
—そこでは、どのような助言を行いましたか?
「働き方が根本的に変わってきているこの時代、今後自身がどのようなライフデザインをしていくか、そこに重点を置くことが大事です、とお伝えしました。就職することが自分に負けることではないし、起業をあきらめることでもない。今は、形式的なことより自分がどんなライフプランを持つか、そのためにどんな道を設計するかをという考え方を持つことを勧めました。するとAさんは、企業への再就職という道も検討するようになり、直営店舗の「経営」であることに自分のキャリアを発揮できるということでAさんは数日後に応募することを決めました」
求職者に対しては「再雇用によるスキルアップ」を、 求人企業に対しては募集条件にはない「チャレンジ力と経営者視点を持った人材」を提案。両者の未発見のニーズがマッチングにつながった。
—今回、マッチングに至った経緯を教えてください。
「まず年齢面で採用条件を上回っていた点が求人企業にとっては想定外です。また、募集の業職種を経験していないことも想定外です。募集条件と大幅に異なっていたので、普通なら企業は採用しないという状況です。ですから、それを打ち破る内定戦略が必要でした。一時的に見たら企業が提示した条件からずれていても、将来的にそれを上回るメリットがAさんにある、と求人企業に確信してもらえなければ、採用は難しい状況でした」
—どのような内定戦略を立てましたか?
「内定戦略として、Aさんの何が企業にとって強みになるか整理しました。その結果、1.店舗マネージャーにとどまらず経営者目線をもった人材であることと、2.部下を育てた実績があること、の2点が強みになると絞りました。そしてこれらの強みが最大限企業に伝わるようなキャリア支援を行うことにしました」
—行ったキャリア支援を具体的に教えてください。
「弊社マッケンは業務委託契約で様々な経歴を持つ人間が集まっています。そのため、複数のプロの目で面接のあらゆる質問・審査で質の高い応答ができる支援を行えるのが強みです。同じ案件に関わる担当コンサルタント全員がメールを共有し、進捗が常に把握できるような仕組みになっています。
今回は、キャリア面から弊社代表の竹内が、相手に与える印象面は私が行い、2名のコンサルタントで支援を行いました。
前者では竹内の人事経験を活かして、面接、人事模擬面接を行いました。
※以下は竹内からのコメント
自己の長期的なキャリアビジョンの明確化、ご自身がもたれている経験や見識、スキルの棚卸と、コアコンピタンス(強み)の明確化、応募先企業での貢献価値について、暗黙知であった情報を「見える化」していく作業を繰り返しました。その過程を通じて、今回の機会に向けてのご自身のキャリアストーリーを組み立ていきました。しっかりした、キャリアストーリーを持つことは、単に選考試験の為というだけでなく、今後のキャリア実践にとても価値があります。また、そうした物語をもっている方は、周囲の方を巻き込むエネルギーを醸し出します。転職や就業を一つの自己成長の機会とし、積極的に将来に向けてのキャリア設計の場として支援しました。これらの作業から出てきたものを面接でシンプルに分かりやすく説明できるようにまとめて、面接支援しました。
相手に与える印象や心構えを後押しする「印象面」から求職者を支援。採用担当者から「エネルギッシュでポジティブな印象を受けた」のお言葉。
—ゆうさんが行った支援を教えてください。
「私の分野である印象面では、募集上限の年齢を超えていても年齢を感じさせない若々しい立ち居振る舞いや話し方をアドバイスしました。彼女はアパレル出身ということもあり身だしなみや服装は全く問題なかったので、主に内面、気持ちの持ち方などにアドバイスの主眼を置きました。その時点でのAさんの気持ちの持ち方は先が見えない不安もあり自己評価がやや低くなっている状態でしたので、表情からも活力が感じられ本来の自信を取り戻せるような励ましと、実際の面接での言葉選び、アピールするポイントの改善アドバイスを行ってコンサルティングしました。
起業家からの再就職という選択をされたことは、どんなに大きな葛藤がおありだったかと思います。そこで、私もできるだけ時間を作りA さんと直接会いコミュニケーションを取るようにしました。メールでのやり取りはもちろん行うのですが、直接会ってその時のAさんの表情や雰囲気を直に感じ取ってサポートすることも大切にしました。
Aさんの状況を把握しながら、私からは何かあればいつでも相談してください、という安心感を持っていただきながら面接に向かっていただきました」
—採用面接はうまくいきましたか?
「はい。のちに頂いたご報告からAさんは落ち着いて面接に臨めたようです。
でも、面接前は当然ですが、Aさんはプレッシャーを感じてらっしゃいました。ですから、私としては、Aさんの不安やプレッシャーを少しでも共有し和らげられるように気持ちの面でも寄り添いました。そして無事一次面接通過。すぐに、ご本人から以下のメールをいただきました」
※Aさんの許可をいただき掲載。以下同様。
事前にお話させていただけたので慌てずにすみました。ありがとうございます。若い力の溢れるパワフルな会社で、事業の発展に携わらせていただけることを嬉しく思います。お役に立てるよう楽しんで力を発揮したいと思います。スピーディーな展開に驚きつつ、非常に嬉しく思っています。竹内さま、ゆうさま、お二人の多大なお力添えに感謝いたします。
—気持ちの面で寄り添ったというのは具体的にはどのようなことを?
「不安や葛藤を共有しAさん一人ではなくチームとしてもAさんのキャリアを成功させていくという心からの支援を行いたい、こちら側にはその心構えがあることを常にお伝えしました。例えば、ある時このようなことがありました。
Aさんが二次面接を控えた前日、ふと夜空を見上げると美しい満月が目に飛び込んできました。深くどこまでも続く広い空に大きくその存在を示す満月の光量と形がとても印象的でした。
それで、遅い時間でしたのでもうお休みになっていらっしゃるかと思いましたが、一言このようなメールをお送りしました。
『こんばんは。梅雨明けしたかのような眩しい日差しが続いていますね。そして、明日は、いよいよ二次面接ですね。どうかいつも通りのAさんの笑顔で良い面接となりますように。今夜の美しい満月にもお祈りしています。
ゆうよう子』
すると、すぐにこんなご返信がありました。
(Aさん)
こんばんは。いつも温かい励ましと心配りをいただきありがとうございます!
ゆうさんのメッセージを見て、満月の光を浴びました。足下からチカラ強さが込み上げて来るように感じます。
不安や緊張感が無いわけではないですが良いコミュニケーションの時間となるよう想いを募らせて明日行ってまいります!
いつも心強いです。ありがとうございます
コンサルとは直接は関係ないですが、そのようなことがありましたね」
—採用面接の後の求人企業側の評価はどのようなものでしたか?
「はい。後日採用企業の方から、とても若々しく見える、エネルギッシュでポジティブな印象を受けた、と好印象をいただきました。こちらとしても意図した評価を頂くことができ、Aさんも私もともに喜びました。
今回のマッチングを振り返って感じることですが、ご本人には私には思い及ばない葛藤や不安が合ったと思います。でもAさんは持ち前の雰囲気とやる気でそれを乗り越え、無事採用に至りました。私はこの変化を目の当たりにできた、その場にいられたということにむしろ感謝してます。Aさんが決心し、取り組み、キャリアを整理し、企業にそれをうまく伝えたという『変化』です」
—Aさんの入社後の様子をうかがえますか?
「今回のマッチングによりAさんが求人企業に内定されたのは今年の7月のことになります。それに伴い入社日は8月1日入社であり入社から現在まで一ヶ月を経過していなく短い採用の経過ではありますが、その中でお話しさせて頂きます。(*2017年8月後半 グッドエージェントアワードエントリー現在)
求人企業は今年9月中旬に第1号店となるフラッグシップ店表参道ヒルズのオープンに向け勢力的な動きをされています。 Aさんは入社当日から名古屋本社へ研修へ出向き初日からやりがいを感じられる充実した毎日を送っています。
研修を終えたAさんからすぐに未来展望が明るく感じられる内容のメッセージが届きました。そこには、
・Aさんの他、同期26名と研修を受けたこと。
・様々な年齢、経歴、国籍、それぞれ人間的に、専門的にハイスペックな方々に影響を受け、絆を深められたこと。
・求人企業のどの商品に関しても知れば知るほどブランドひとつひとつに物語があり、感動を覚え、誇らしく想えること。
・概念にとらわれない創造力を試される環境で自分次第で可能性を広げられる仕事に喜びを感じていること。
そして、最後にやりがいを感じる環境に、改めて、求人企業へご紹介いただいたことに感謝しています!
とのお言葉をいただいております。
求人企業から、Aさんは毎日元気に出社し、積極的に取り組む姿勢に期待感を持っているとの声を頂いております。
社員の平均年齢が30代ととても若い人材が集まっている企業です。その中で、過去の経験から多くの部下を持ち、企業内における人間関係の悩みに丁寧に耳を傾け、様々な問題解決に一躍かってこられたAさんの存在はますます大きくなっていくと思います。経営者視点を持つマネジメント職としての遂行を期待できるだけではなく、社内で働く方々にとられましても心理的な部分において安心感が得られ、常にモチベーションを高めていくことが可能な頼りになる人材として重宝されることが容易に想像されます。
そして、革新的なアイデアと経営者視点を持った店長であり若いスタッフをまとめ上げる人格を持ち合わせる人材をマッチングできたことは、求人企業にとってさらなるご躍進の後押しになると感じています」
—このマッチングが社会に与える影響があるとしたら、どのようなものがあるとお考えですか?
「女性の社会進出という言葉でまとめてしまうと時代遅れな感じもしますが、実際には女性が社会で働く上ではまだまだ様々な障壁があります。その中で、確かなキャリアを積んで、そのキャリアをちゃんと整理すれば、たとえ募集条件から逸脱したケースであっても企業にアピールできるという事例を作れた、ということでしょうか。これが、今、キャリアを積んでいる女性、将来のキャリアプランに悩まれている女性にとって参考になれば嬉しく思います」
—ゆうさん、ありがとうございました。