OMAとは
OMAとはOpen Minds through Artの略で、認知症の方のための交流型創作アートプログラムです。
認知症の方が筆を持ちキャンパスボードに向かい、絵を描くという創造的な機会を得ることで、社会参加、自律性、尊厳を高めようとするプログラムです。
さらにそのアート作品を美術館等で地域公開。認知症の方が持つ創造的な自己表現能力を社会に見てもらう場も用意します。失われたこと・できないことに焦点が当たりがちな「病気中心の観方」から、成長すること・できることに焦点を当てる「人間中心の観方」へシフトする。その過程にボランティアや地域市民が関わることで、認知症の方との関係づくりや社会創成にもつながっていく。
OMAはそんな市民参加型の新しいアートプログラムです。
OMA Japanについて
OMA JapanはOMAを日本に導入するプロジェクトです。OMA Japan 代表であり、マッケンのパートナーでもある輿石美和子さんが、アメリカ、オハイオ州マイアミ大学老年学センターのOMA創始者エリザベス(リカ)・ロコンと連携しながら日本へのOMA導入へ向け活動されています。
マッケンはOMA Japanの活動を支援しています。
輿石さんへのインタビュー
━OMAに関わるようになったキッカケを教えてください。
OMAの創始者エリザベス(リカ)・ロコンとは30年以上前に同じ会社(Epson)で知り合い、国際化教育等数々のプログラムを共に開発、実践してきました。その彼女がアメリカで開発したOMAの紹介を受けたとき、障がいのある方一人一人の尊厳を大切にするプログラムであることに感銘を受け、日本にも紹介したいと思うようになりました。
━OMAはすでに日本に導入が始まっていますか?
施設等で少人数の皆様を相手に実施しています。また環境が整い次第、エリザベス(リカ)・ロコンを招聘し、東京、長野でワークショップを開催予定です。
━OMA Japanは日本の労働環境や雇用環境にどのような影響を与えるとお考えですか?
2025年には65歳以上の5人に1人が認知症になると予測されています。ご家族の問題も含めるとまさに我が事です。どなたも最後まで自分らしく生きるためのプログラムが社会に開かれた形で提供されることにより、健常者とそうでない方々との断絶をなくし、生きる事と働く事のバランスのとれた豊かな社会につながるよう貢献できると思います。
実際に描かれた絵のご紹介
それでは実際に、認知症の患者さんが描いた絵をここで少しご紹介させていただきます。これらの絵をご覧になって、皆さんはどのようにお感じになるでしょうか?
※クリックすると大きくなります。
OMA©メインビデオ
こちらは本国アメリカのOMAのPRムービーです。英語ですが、動画の下に日本語訳を載せてありますのでご参考ください (訳:輿石美和子)。
1.リカ(Elizabeth Like Lokon, OMAの創設者、冒頭の言葉)
認知力に何ら問題のない、いわゆる普通の人は、何か、あるものをあるがままに(具体的に)表現できないとき、すぐさま抽象的な話に持っていくことができます。
ですが、(認知症のように)自己表現する能力に障がいがあると、「あ、この人は何もわかっていない」と思ってしまい、その結果、(認知症の人に対する)人権侵害がおこるのです。
(認知症でも)その人はまだその人としてれっきとして存在しています。ただ認知症という病気のために(表現することを)ブロックされているだけなのです。何か表現しようとしているかもしれないのに、そんな人はいない、というわけはないのです。
論理的に考えたり、言語表現ができないからこそ、「アート」は一種の伝達手段になります。
「アート」は彼らにとって残された「期待」の手段なのです。
2.モリ― Molly(認知症の方)
(OMAで絵を描き)自分がしていることを見ていると、どうやったらこれができるかがわかるのね。その、それまでの自分とは別人になってね。
3.マイアミ大学 Scripps Gerontology Center Jennifer Kinney教授
OMAには基本的に4つの目的があります。
最初は、認知症の方に、創造的なアート制作を通して、自己表現の機会を持ってもらい、自尊心や自立心の感覚を取り戻すこと。
二番目は、認知症の人と若い人、あるいは認知症のことをあまり知らない人との間にある世代間ギャップを縮めること。
三番目の目的は、認知症のあるかなり高齢のお年寄りでも、アートを通して十分に社会に貢献できることを地域社会に理解してもらう手助けをすることです。
そして最後に、OMAで蓄積された研究成果を他の研究者にも役立てることができるようにすることです。
4.Bailey McClellan (ボランティアのマイアミ大学学生)
認知症の人と一緒に何かすることは、単に教科書を読んだり、映画で描かれていることを見るのとは違って、本当の学びになります。ここでの経験は、それまでの私を形づくっていたものを全く変えてしまいました。もしこのプログラムがなかったら自分が何をしていたか、本当にわかりません。
OMAに関わることで、このキャンパスで何をするか、どういう友達を持つかについての目的意識を与えられました。もちろん(OMAがなくても)何かやっていたでしょうが、“老年学”はマイアミ大学で特に何か本当に違いのあることをしている気にしてくれるのです。
なぜなら資金的な貢献もする老年学クラブの一員ですし、地域の施設にも貢献しているし、きっと今後生涯を通して(OMAに)関わることになると思っています。
5.リカ(前述のOMAの創始者)
長期介護施設に入所している認知症の方にとって、ほとんどの場合、その方のために全てのことは決まっており、その人自身が意思決定することはありません。もし意思決定を委ねたら、決めるのに時間がかかりすぎるし、混乱します。ですが(OMAの)一時間は全て自分自身できめることができる一時間なのです。選択肢の中から自分で選ぶことが組み込まれており、自律性も織り込まれています。ですからうまく行くことがほとんど保証されているのです。
6.David C. Hodgeマイアミ大学学長 (男性)
OMAの学びには、加齢、認知症等に対し“敬意”を払うという側面もありますが、一方でさらに深い人間的な成長があって、そのような状況にある人々とどうやったら人間的に繋がりを持てるかを深く理解することができるのです。
7.Carol Silver Elliott 長期介護施設長(女性)
私たちの使命は、認知症に苦しんでいらっしゃる個々人にとって、可能な限り人間的に豊かな経験を味わって頂くことなのです。
8.リカ(前述のOMAの創始者)
このプログラムのミッションは、年齢や認知の壁を乗り越えて繋ぐ橋を作ることです。
そしてその橋は、実際に、ある関係性、愛が根底にある関係性なのです。