目白からの便り

リーダーシップ

この時期になると毎年のように思い出す記憶がある。私が企業に入社したての頃の出来事である。その当時の私は腕時計の製造会社に出向し人事の新米として働いていた。勤続35年の永年勤続を祝う祝会を市内で一番格式があるホテルで行っていた時の風景である。普段の飲み会とは異なり、広々としたホールで立食形式での祝賀会食会であった。その会の後半、社長が絨毯がひかれた床に胡坐を組んで座り出席者を促し車座になってお酒を飲みだした。ホテルの従業員は慌て驚いた様子だったが、その輪がどんどん大きくなり、いくつもの集団ができた。

永年勤続の表彰を受けた社員の多くは長年勤めてきた製造現場の年配の方がほとんどだった。立食で歓談していた形式的な表情だった顔が普段の顔に変わった瞬間だった。大学を出て間もない私にとって衝撃的な出来事で35年以上たった今でもその風景と社長がひとり一人にお酒を注ぎ、ねぎらいの言葉を満面の笑みで接している映像が刻まれている。その時、リーダーの神髄を見たように感じた。合理性の限界を超えた影響力はこうした行動を自然体で起こすことができることなのかと。この行為は決して専門知識と経験、熟練を蓄えても成しえない。

数か月前から、私が所属するロータリークラブの大先輩の方がフォッサマグナ(Fossa magna 意味:大きな溝)について地域の他のロータリークラブを交えた学習会を試みようとしている。フォッサマグナは日本の地溝帯で東日本と西日本の境目となる地帯である。かつては日本列島を分けた海であり、地質の隆起や堆積によって今の地形に至っている。その西端境界線に「糸魚川静岡構造線」があり、その線上にポツンと私の自宅がある松本市(長野県)が置かれている。こうした不安定な地形の上で、先人たちは様々な地殻変動に伴う地滑りや、地震などの自然災害をたくましく乗り越え今日に至ってきている。彼は、私たちが向き合っているコロナ禍も先人たちと同じく必ず乗り越えていく長い歴史の一部になるのだと語る。そして、乗り越えてきた歴史を考え、人々に希望と前に進む力を伝える機会ができればとその実現に向け、粘り強く、関係するあらゆる人に謙虚に柔和に尽力する。

12月を迎え、キリスト教の教会歴では待降節( Advent)に入りクリスマスを迎える季節にはいった。今年はコロナ禍の中、例年と異なるクリスマスシーズンと向き合うことになるかもしれない。厳しい局面に対峙しその艱難と格闘している人、不安な日々を過ごしている人も多いのだと思う。聖書の中の彼は、その生誕から短い生涯をかけて弱く、苦しむ側、弱い側にある隣人にそのすべてを奉仕(Servant)してきた。

2020年12月、様々なタイプのリーダーシップを感じることができ勇気づけられる。

今日一日が良い一日となりますように、悲しみと困難、不安に向き合っている方に希望がありますように。良い週末をお過ごしください。新しく始まる一週間が皆様にとって豊かな一週間でありますように。

2020年12月4日  竹内上人

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