目白からの便り

シニア世代の調査をして考えたこと

週報を考える時間は、早朝のまだ薄暗い5時から6時頃から書き始め、明るくなってくる7時から8時頃に送信するのが習慣化している。一週間の出来事を振り返り、人事の視点で再構成して頭の中を整理する。書き出しの時間帯は、この時期はまだ日が昇る前である。居住している部屋から外を眺める。周囲は高層ビルに囲まれているのだがいくつかのビルのフロアーではすでに明かりがともり今日の仕事がスタートしている。田舎の朝も早いが、都心部の朝の始動も同様に早い。

学習院大学のゼミ活動の一環で、いくつかの大学と様々な企業課題のテーマを取り上げ調査研究するプロジェクトを昨年の夏頃から取り組んできた。今日が全体の発表の日でもある。昨夜も学生と最後のプレゼンの打ち合わせをしながら、いくつかのことを考えた。

私が学生にお願いしたテーマは、「組織のおけるシニア人材の活用」について、現状の分析と関係する企業制度の実態と当事者の意識、そして主管部門である人事部長たちのリアルな声に耳を傾けてみたいという関心事である。ここでのシニア人材は、50歳半ば以降から70歳くらいを想定している。

長く人事畑を歩んできて、現在の雇用の現場でシニアの方々のキャリア選択と支援の現場に携わっているので、自分なりの仮説は持ち合わせている。また、その処方箋のいくつかのアイデアもある。ただ、その適用に関しては、それぞれの企業の生い立ちと、各々が直面している人事経営課題の優先度、組織環境と人事の展開能力の濃淡で個別的になり、人事部長たちは苦労を余儀なくされる。

調査の結果は、予測通り日系大企業で伝統的な組織の積み重ねがある企業は、総じて50歳代半ばからの人材活用に関しての課題に直面している。外資系と中小規模の企業は人材に関する基本とする考え方が類似していて、年齢というより能力や組織適任性でシニア人材の活用が能動的に行われている。特に中小規模の会社では、若年層を採用する力量が十分でないことによる人材不足や、管理職訓練が不十分で経験豊富な人材に経営の中核を担ってもらわざる得ない実情もある。

人間の素朴な感情として、今まで所持していた役割や責任を、まだまだ体力的にも精神的にも余力がある段階で、次世代に譲らなければならない組織の事情は、驚くほど高い倫理観を持ち合わせる日本の管理職者は、冷静に自己を納得させながら受け入れながらも、それに伴う処遇の引き下げやかつての部下の指示のもとで限定的な職責を果たすという現実に直面した時の心の整理は相当な労力を有するのであろう。加えて、「同一労働、同一賃金」の形式的な原則がさらにその仕事の幅や深さを素朴に活かしたいという意欲に反し、賃金額主導で仕事領域が無感情に抑制をかけられる危惧も予感させられる。

今回一緒に活動した学生は概ね20歳代少しである。偶然にも彼ら、彼女らの親の世代がちょうどこの50歳代半ばにあたる。企業や組織では管理職を担っている親も多いであろう。家庭でみせる親の姿と、企業における姿。家では決して見せないであろう職業人としての葛藤の一部、家族や大切な人の為に、どんな環境でも前向きに向き合っていこうという力強い姿に少しでも触れてもらえる機会にもなればと思う。

今日一日が良い一日となりますように、深い悲しみと困難、不安に向き合っている方に希望がありますように。良い週末をお過ごしください。新しく始まる一週間が皆様にとって、豊かな一週間でありますように。

渋谷の自宅にて 竹内上人

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