目白からの便り

新入生の涙

みなさま

今朝の都内は薄日が差す穏やかな朝を迎えている。日中は、上着を脱ぎ、半そででも心地よい季節である。速足で歩くと少し汗ばみ確実に季節の変化を感じる。

今週から、横浜国立大学、東北大学での講義も始まった。春になると大学に新入生が入ってくる。私の講座は主に海外からの留学生が中心で構成される。講義の内容はキャリア設計、リーダーシップ、チームビルディング、EQ(感情能力)を基軸におき、それぞれの講座のテーマを交差させながら構成する。

最初の講義は、とても楽しみでもある。受講する学生の数も気になるところであるが、どんな学生と7月までの4ケ月間を過ごすのかと期待もする。私の講座は、学生がグループディスカッションなどを通じ、主体的に参画しながら理解を深めていく方法をとっているため、クラス自体が一つのチームになる。

チーム内の融和が進めば進むほど、相互の情報交換が活発になり、お互いの考えを通じ、刺激を交差しながら主体的な気づきを誘発する。基本となるコンテンツは提供するが、私の想像を超え学生たちの中で新しい価値に昇華する。学生の変化から私も純粋に多くのことを学ぶ。

新入生が授業に出席する時期になると思い出す出来事がある。ある講座の最初の授業が終わった後にひとりの日本人女子学生が真剣な表情で次回もこの授業を受けたいのだがどうしても自分の考えていることを英語で表現することができないと訴える。講義は英語で行うために日本人の学生の受講自体は少数ではあるが毎回何名かの学生が受講をしてくれる。

悔しくて歯がゆくてどうしようもない気持ちを抑えきれずに涙を流す。学年を聞くと1年生だと言う。高校を出て間がないこの時期、毎日、新しい出来事と格闘しているのであろう。18歳の多感な彼女にとって新しく交流する留学生との意見のぶつけ合いはこれからの大学生活をどう過ごすか真剣勝負でもある。悔しいと言葉にすればするほどとまらなくなる涙を拭わずに来週も出席してもいいかという問いに、もちろん大歓迎だと伝える。

同様に企業でキャリアをスタートする新入社員、馴染みのない職場環境に適合しようとする転職者にとっても、自分の思い描く理想と現実とのギャップに打ちひしがれる時でもある。対岸にどうしたら渡河できるか。濁流に流されそうになる身を鼓舞し、あらゆる手段と方法を考える。逃げ出したい思いを断ち切り、その間を埋めようともがく。

私はそうした格闘を好意的に受け止めている。きっと涙が出るほど悔しい思いはその間を埋めるための大きな原動力となり、真摯に向き合うことにより自己成長する可能性となる。新しい生活が始まる大学生、転職で新しい職場に赴く社会人、そして私自身にとって、心地よい悔しさと葛藤に前向きに向き合う季節であればと願う。

今日一日が良い一日となりますように、特に悲しみや困難に向き合っている方に励ましがありますように。また、良い週末をお過ごしください。新しく始まる一週間が皆様にとって、豊かな一週間でありますように。

都内にて

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