目白からの便り

受験 サクラサク

この時期は各大学で合格発表が続く。受験と言うものは18歳そこそこの若い人たちにとってつくづく過酷な経験なのだと感じる。希望の大学の合格の切符を手にする人もいれば、思いが届かず、来年再受験を試みようとする決断する人もいるだろう。私も学生時代のことを振り返ると、この時期のことを今でも鮮明に思い出す。文部科学省の発表したデータによると近年は一般入試という一発勝負の受験以外の選抜方式である学校推薦型の比率が年々高まり、現在では私立大学の60%強、国立大学で10%台、公立大学では20%台で推移している。学校推薦型は高校時代の成績の積み重ねがその判定基準になることから、一般入試試験と同様に継続的な自覚と目的意識がないと希望の水準に達しないという意味では同じ試練の経験として私は評価している。

合格発表は今ではほとんどネットで確認することが常だと思うが、私の時代はまだ郵送や、直接大学構内に掲示される合格発表者一覧を見に行くことが多かった。時には、入試会場で声をかけられる「電報屋」の力を借りることになる。『サクラサク』の文面の到着を私のような地方学生は心待ちにする。希望する大学の合格発表を実際に掲示板で自分の受験番号の存在を確認した時の嬉しさは鮮明な記憶でもある。大学から最寄りの駅に向かう明らかに浮き立ちだった自分の心境を今でも思い出す。

大学の時に心に残る言葉は、このコラムでも過去取り上げたことがあるのだが、数学者の森毅先生(故人)の「独りで歩むこと」、と、同じく数学者の寺田文行先生(故人)の「マイペースで一歩ずつ歩もう」がある。懐かしさやご縁があるかたは、一昨年の同時期のバックナンバーに掲載あるので、ぜひ、ご覧になっていただければと思う。自分のコラムであるが、この受験生時代のコラムは今でも読み返すといくつかの教訓を示唆してくれる。

大学はキャリアの観点からすると、まだまだ最初の通過点であり、大学4年間を通じてどのように自己成長を大学のあらゆるリソースを活用して、自分の糧にして、将来の実社会で活動する上でのキャリアの基本的な構想設計と、それに真摯に向き合う姿勢や態度の修練の場であると思う。つまり、キャリアのスタートラインに立つ助走・準備期間のようなものである。大学を卒業した後、多くの人が実企業や公的機関の職業に就くであろう。たとえ大学に残り、学問を志す研究者であっても、マックス・ウェバーの『職業としての学問』の著書の中で示唆したようにそれも普遍化される構成概念の捻出の過酷であるが価値ある職業である。卒業後の職業的貢献と言うものが、社会にとってどのような価値があるのか、また自分自身にとってどのような意味があるのかをよく考えた上で、自分の将来のキャリアのシナリオを長期的に描いてもらうような時間であってほしいと願う。葛藤と模索、希望と落胆の繰り返しに真摯に向き合い、自己を鍛錬し続ける人とそうでない人では、長い人生において決定的な違いが生じる。意気揚々と新しく大学に入学する人を自分の教室で迎え入れる瞬間が待ち遠しい。

今日一日が良い一日となりますように、悲しみと困難、不安に向き合っている方に希望がありますように。良い週末をお過ごしください。新しく始まる一週間が皆様にとって豊かな一週間でありますように。

2025年2月28日  

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