目白からの便り

中小企業にとっての好機

大学の留学生を対象としたキャリア実践講座で、インターンシップのみならず、日本で就労したいという意思がある学生が履修している講座がある。講義の中で、日本の企業において、なぜ、海外からの留学生の採用が拡大していかないかというテーマでグループディスカッションをする。私は彼らの応答に感心する。よくわかっているのである。彼らのまとめたグループディスカッションの理由の上位には、どのグループも「企業で育成し、主体的に活用して欲しい年代に差し掛かった時に、転職したり、出身国へ帰国してしまう心配を経営者の方がもっている」であった。この心配は日本企業の人事担当者の共通の心配事でもある。3年から5年くらいで転職をされてしまうと、初期の人材育成投資が終わり、これから実践的な活躍をしてもらいたいというタイミングで貴重な人材を失うことになる。

逆の立場で視点を移すと、日本企業はプロモーションもなだらかなカーブを描き、30歳前後では、組織を統括する責任あるポジションにつくには早すぎ、彼らの旺盛な上昇志向やモチベーションリソースを満たすことができない人事制度的な制約もある。また、長く勤めるにはあまりにも組織が同質化しすぎ、業務が属人化し、彼らにとって、仕事のプロセスや、意思決定のメカニズムがわかりにくい。

日本は今後少子高齢化が進み圧倒的に若年労働力が不足する。要員不足を定年延長で補い高齢化した要員構造では、グローバル競争で諸外国の活力ある企業と伍していくのは至難の業だ。特に日本の産業構造の中で主力の中堅・中小企業では問題は深刻である。今後10年から15年の時間軸では、限界集落のような若年者がいない限界企業になりつつある会社が多く存在する。

欧州で第二次世界大戦の時に男性は戦地に送られることで、職場の要員不足が決定的になった。その時に女性が急激に職場に入り、女性の雇用機会が急速に拡大した。女性活用は構造的な労働力不足を力強く支えた。日本の雇用市場は、男性女性も含めて総就労人口自体が経済規模と比較して圧倒的に不足する。その解決策は、高度に教育された良質な多国籍人材を企業の組織の内部に取り込むことである。あるいは彼らを取り込めるだけの就労環境を仕組みや、職場の仲間の良質な交流(コミュニ―ケーション)能力を高めることで整えていくことである。

大企業は、優秀な人材を新卒採用市場でも優位的に確保できるので切迫感は低い。中堅・中小企業は、そこが好機でもある。早く組織内部の様々な環境を多様化・多国籍化に対応できるようにしていくことだ。必ず良質な外国人が吸い寄せられる。その時、大企業よりグローバル競争では中堅・中小企業の方が優位に立つ。反転攻勢の絶好の機会にいる。

今日一日が良い一日となりますように、悲しみと困難、不安に向き合っている方に希望がありますように。良い週末をお過ごしください。新しく始まる一週間が皆様にとって豊かな一週間でありますように。

2022年11月11日  竹内上人

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