目白からの便り

リーダーシップの在り方 その4 組織の作り方 PM理論

ここ数週間、このコラム週報では、リーダーシップの在り方について考えてきた。今朝、コラムを書くにあたって、手元に日本において古典的なリーダーシップの理論として位置づけられている三隅二不二(じふじ)先生のPM理論の論文を引っ張り出してきた。1963年(昭和38年)に書かれた「組織体におけるリーダーシップの構造一機能に関する実験的研究」*1と題されている。若い人事担当者の人には馴染みが薄いかもしれないが、熟練の人事屋の方にはよく知られた古典的な理論である。1963年というと私が生まれた翌年という年代物である。

このPM理論はリーダーの行動を、目標達成機能(P機能:Performance)と集団維持機能(M機能:Maintenance)の2つの機能のバランスでリーダーシップの在り方を定義する考え方である。三隅先生はクルト・レヴィン(Kurt. Z .Lewin)によって研究されたグループ・ダイナミックス(集団力学)を日本に紹介した研究者でも有る。P機能とは成果を重視したリーダーシップで、メンバーを叱咤激励し組織の成果を高めようとする機能であり、M機能は人間関係に配慮し、メンバーへの気配りを通じてチームワークを維持する機能である。リーダーシップの分類をこのように単純化することは危険でも有るが、類型化は状況を瞬時に理解しやすいのも事実である。

三隅先生の検証実験では、架空の作業課題を与えた組織を構成し、実験集団のリーダー役にP型としての言動(もっと正確に!、もっと迅速に!等)、とM型としての言動(あともう少しだから頑張って!、楽しく愉快に!等)、そしてPM型として両方の言動を交互にとる方法で、1回50分、13回の連続した実験を行っている。組織の生産性が最も高い結果は、みなさんの推測通りPM型である。今でも容易に想定できるリーダーとしての行動様式であろう。ただ、リーダーを担う人にとっては、その構造はわかっているが、両方をバランスよく組み合わせることが出来ないのが悩みでもある。

ではどうすれば、このバランスを取ることができるか、私のアドバイスは、リーダーとしての行動記録を日々つけることである。定量的な表現でも、定性的な表現でも構わない。精緻に描写しなくてもいい。

「今日はちょっとPが強かった」とか、「今日はMに偏りすぎ、言いたいことを躊躇した」でもいい。リーダーとしての自分の言動を記録し続け、その記録を読み返すことによって週単位でのバランスを保つことができる。どちらかが苦手であっても、リーダーを担うことになったら、両方の機能の発動者としてその役割を演じなければならないのである。

今日一日が良い一日となりますように、悲しみと困難、不安に向き合っている方に希望がありますように。良い週末をお過ごしください。新しく始まる一週間が皆様にとって豊かな一週間でありますように。

2023年6月2日  竹内上人

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