目白からの便り

新たな雇用機会の模索 多様な雇用にチャレンジする

今週、新しい選択をすべきかどうか、5年以上も大企業の組織の中で、悶々と悩んでいる男性へキャリアコンサルタントをしていている会話の中で、お伝えした言葉である。この言葉の主は、私ではない。6年前、ある海洋冒険家の方とお会いし、お話を伺う機会を得た時に自分の精神の奥底に刻み込まれたこの海洋冒険家の方の言葉である。彼は、VENDEE GLOB(ヴァンデ・グローブ)というヨットで世界一周をするレースにチャレンジをしている。しかも単独でどこの港にもよらない無寄港、無補給という厳しい条件の中でのレースに向き合っていた。世界一過酷なヨットレースとされる。今でもメディアでその颯爽とした姿をお見かけすることがあり、私自身が勇気づけられる。

出発地は、フランスの港でそこから南アフリカを回り、オーストラリアと南極の間を抜け、南アメリカの最南端を抜け、再びフランスの港に戻ってくるというというレースである。当時、彼の言葉から、前回のレースでも途中でヨットの生命線ともいえるマストが暴風の中でその風圧に耐えきれずに折れてしまい南アフリカのケープタウンに引き返すことになった。言葉で表すことができない悔しさであろう。彼が言葉にした、
「何もしなければ、何も起こらない」、と言うメッセージがいつまでも脳裏に刻まれている。

何度も生命の危険と向き合いながら積極的に究極のヨットレースに立ち向かい続ける姿から発せられると、この重みはかけがえのない至高の言葉となる。何かに真剣に取り組み格闘している人からのみ感じられる言葉の重みである。その後、自身2度目の挑戦で2021年、33艇中16位で完走を果たした。

リーダーシップを考える時にとても大切なことは、その人が持っている知識の絶対量ではなく、とてつもない情熱のエネルギーに裏付けられた実践の積み重ねである。自分自身と格闘することによってのみ得られる「力の源泉」である。第三者の引用ではなく、その人の実体験に基づく言葉によって、人は合理性の限界を超えた影響力を感じ、その人についていこうという衝動に駆られる。このことは冒険家であっても、研究者であっても、実務家であっても全て同じである。何かに真剣に向き合い続けることによってのみ行き着く場所があるのだ。そこからオリジナルな流儀が創出される。彼の話で頭から離れないエピソードは、レースの過酷さではなく、高校生のころ、縁もゆかりもないヨットの師匠となる方に単身飛び込みこの世界に入った、屈託のない純粋さに支えられた挑戦の精神である。

「何もしなければ、何も起こらない」

キャリアにおいても自分を失い、周囲の空気に流され、悶々と自己を封じ込め、漂流し続けるのではなく、自ら舵を握って、風をとらえ、自分の内面からくる言葉を羅針盤として、駆け抜けていくことが、自らを鍛錬し、人を勇気づけることができる。今日もそうしたことを少しでも実践する一日でありたい。

今日一日が良い一日となりますように、悲しみと困難、不安に向き合っている方に希望がありますように。良い週末をお過ごしください。新しく始まる一週間が皆様にとって豊かな一週間でありますように。

2022年10月28日  竹内上人

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