目白からの便り

新しい職場 90日・180日・365日の過ごし方 その二 次の180日間

今回でこの新しい職場の過ごし方のコラムは最終回になる。新しい職場で半年を超え、今までの歩みを振り返るとあっという間の時間でもあり、長く艱難を伴う時間の連続でもあったかと思う。半年間、新しい環境を航海したことを静かに喜びたい。このまま一年間という通過点に向けて新しい期待があなたに課せられ、チャレンジングな船出が始まる。同じ仲間としての期待は容赦がないかもしれない。ただ、それを乗り越えるためのいくつかの経験と知恵も身に着けたはずだ。また本音を語れる同僚もできたかもしれない。蓄えていたあなたの力量のターボエンジンにスイッチを入れる時になる。

「最後の365日目までの過ごし方」

何とか1年間を過ごすことができそうだと実感を得られる時期である。この頃には、深い人間理解に基づいた会社、事業、職場の問題・課題の明確化と、なぜそのような解決すべき問題と、達成すべき課題に至ったのかという要因分析に基づいた取り組み施策の着手段階に組織活動として入っていることが望ましい。1年間を通じて新参者は、極端に遠慮する事は必要ないが、同僚や上司、部下との協働意識をもった姿勢や立ち居振る舞いを意識して過ごしていくことである。

焦る気持ちをひたすら抑え、ひとつひとつの事象について、組織として取り組める環境をつくれれば、その後の数年はきっと充実した時間を積み上げていくことができるであろう。その過程を通じて、その人の風格を際立たせ、職場にその人の風味を醸し出す。

『・・・焦ってはいけません、頭を悪くしてはいけません、根気づくでお出なさい。世の中は根気の前に頭を下げることを知っていますが、火花の前には一瞬の記憶しか与えてくれません。うんうん死ぬまで押すのです。それだけです。決して相手をとらえて、押そうなんて思ってはいけません。相手はあとから、あとから我々の前に現れ、そうして我々を悩ませます。・・・』

苦闘した受験生時代に現代国語の問題集の裏表紙に掲載された芥川龍之介に送った夏目漱石の手紙の一文が蘇る。昔の記憶なので、誤って記憶している箇所もあるかもしれない。昔も今も正しい人間理解はそんなに変わらないのだと思う。

こうした取り組みを積み重ねても、不幸にも1年過ぎ、不安定な環境が変わらず、孤独感から脱することができず、明らかに冷淡な視線を感じ続け、仕事に対する達成感を感じない場合は、人事の方や規模が小さな組織の場合は、直接、担当役員や経営者の方に素直な気持ちで相談してほしい。特に心身に堪えられない変化を自覚している場合は、専門医の相談を早めに受けることも必要である。そして、その機会にも手ごたえを得られない場合は、新しい船に乗り換えることを選択してもいい。あなたを歓迎する新しい船は、日本にはあまたある。

最後にこの365日のプロセスは、新しくキャリアを始めた方にだけのメッセージではなく、むしろ、新しい仲間を受け入れる職場の上司や同僚にお伝えしたいことでもある。人事担当者としての限界も感じることが多い。新しい仲間を受け入れる職場の一人一人の力がどうしても必要である。あなたが逆の立場だったらどう扱われたいかという最低限の感受性をもって欲しい。

今日一日が良い一日となりますように、悲しみと困難、不安に向き合っている方に希望がありますように。良い週末をお過ごしください。新しく始まる一週間が皆様にとって豊かな一週間でありますように。

2021年12月3日  竹内上人

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