目白からの便り

鶏口となるも牛後となるなかれ 金鳥の蚊取り線香

今朝の松本は、深夜から降り続いている雨の影響で涼しく、少し肌寒い朝を迎えている。 今日はお盆の入り。伝統的にご先祖様をお墓から自宅に迎え入れるための迎え火をされるお宅も多いのであろう。

昨夜、屋外で夕涼みをしている時の何気ない会話で、今年の夏は蚊に悩まされないという話になる。さすがに猛威をふるコロナウイルスは関係がないかと思うが、ここ数日前まで続いた連日の猛暑が原因とのこと。蚊が活発に活動する気温は26度から32度で、35度を超えると活動できなくなるのだという。今年は夏の主役の蚊取り線香の出番も少ないのかもしれない。

愛知にある実家では、今も伝統的な「金鳥(KINCHO)」の香取線香を使っている。馴染みのある緑色のもので、寝る時に火をつけ、朝まで煙を醸しだし、蚊を寄せ付けない。老夫婦の暮らしなので、電気式のものでもいいものかと思うが、やはり煙が出ないと効かないと信じている。この金鳥の蚊取り線香、これは登録商標である。生産会社は、大日本除虫菊株式会社という。金鳥のシンボルマークに描かれている鶏は古の言葉の「鶏口となるも牛後となるなかれ」に由来する。小さな存在でも大きな組織に飲み込まれず、特徴を出し先頭を目指し、必要とされ続ける存在になるのだという意味が込められている。

個人のキャリアも、企業の戦略も、希少性が大切である。必要とされる価値に注意深く神経を割き、他に簡単に代替されない存在価値を探し出し、それを研ぎ澄ませることで価値を増大させる。経営学の用語で「VRIO(ブリオ)分析」という言葉がある。「V:Value(経済的価値)」、「R:Rareness(希少性)」 、「I:Imitability(模倣可能性)」、「O:Organization(組織)」の頭文字をつけた言葉である。企業の強みを示す言葉であるが、個々人のキャリアでも同じだと思う。キャリア上の経験値、希少性、模倣困難性、と個々人がもつ人的ネットワークの良質さと広さである。

私は大学の講義でも企業研修でもキャリアに関するテーマで講義をする時に、その中でも特に希少性を暗示する「1万人分の1」になることの大切さを受講生につたえる機会をもつようにしている。作家の藤原和博氏は、「100万人分の1」を推奨しているが、もう少し身近で現実的なところで「1万人分の1」の目標を目指した方がいいと感じている。では、どのようにして、1万人分の1の存在になるか。

経理の専門家で1万人分の1といった希少性を発揮するには、相当な努力が必要だ。一方で、経理の専門に加え、語学が堪能であるとその希少性は高まる。ひとつの専門性や得意分野だけで最高峰を目指す方法もあるが、複合的な掛け合わせによってその希少性を高めることができる。
経理の専門家で1万人分の1位になることは難しいが、100人中1位相当であれば手が届きそうだ。同様に語学も100人分の1を目指す。この掛け合わせ「100×100」で、1万人分の1になれる。これを息長く続けるのである。息長く続けるのであるから自分の興味がある分野が良い。そうでなければ長く続かない。継続すれば、自分の目標となるキャリアの領域で、必要とされる複数の専門性・経験を有することで、「鶏口」を目指すこともできる。

今日一日が良い一日となりますように、悲しみと困難、不安に向き合っている方に希望がありますように。良い週末をお過ごしください。新しく始まる一週間が皆様にとって豊かな一週間でありますように。

2021年8月13日  竹内上人

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