目白からの便り

コミュニケーションが成立する環境について

10月に入り大学でも新しい学期がスタートする。一足早く、学習院大学では秋学期の講義が始まっている。春季と同様にオンラインの講義になる。学生のことを考えると、できれば数回はリアルな対面式の講義をしたいと思うが、オンラインとリアル講義が無秩序に構成されると履修する学生も、受講場所の制約の関係から戸惑うのかと思う。一方、東北大学、横浜国大、信州大学では、留学生を中心とした講義を担当しているので、この10月入学の生徒を受け持つことが多い。コロナ禍の関係で来日できないまま母国で講義を受講する留学生の生徒も加わる。日本での初めての授業に向き合う学生たち、文化や慣行も異なる環境に直面して彼らはどのような気持ちでいるのであろうか。

後期課程では「日本的経営とキャリアデザイン」、「組織におけるリーダーとしてのEQ(心の知能指数)」にフォーカスをあて15回の構成で講義を行う。日本企業の雇用慣行、雇用システムの理解と、どのようにそのシステムと自分を調整していくのかに焦点をおいた講義を計画する。また、人事の実務的な視点から、日本での企業インターンシップを行う上でのケース・事例を通じて実践的な指導を試みる。留学生をインターンシップとして受け入れた企業自身が、彼らを通じて、ダイバシティーマネジメントに覚醒し、グローバルな視点での組織マネジメントを行う上での起点になればと願う。

大学で講義をするようになって、5年が経過する、例年、最初の講義は彼らの不安そうな顔が痛いほど感じられる。1年生は18歳~19歳なのだから、まだ高校を卒業して間がない。精神的には世界の辺境で、学習をスタートする最初の授業である。私が経験で身に着けたことは、初期段階は、できるだけアクティビティを伴った内容を中心に授業運営を行う。履修する学生間での親和性を高める様々な仕掛けを少しずつ身に着けてきた。チームビルディングがその後の講座の内容を学習する上で大切であることを私自身が学習した。形式的なレクチャーを避け、時々自分は芸人なのかとも思う時がある。

コミュニケーションが成立するためには、信頼関係の構築が前提になる。いくら良質な情報をもっていても信頼関係が不在であると、コミュニケーションは成立しない。信頼関係を構築する上での前提はなにかというと、自分自身をできる限り正直に、誠実に相手にさらけ出すことから始まる。人は得体のしれないものには警戒するのが常である。となると、コミュニケ―ションの技術を身に着けるという最初の課題は「自分は何者か」ということを自分自身が正しく理解し、それを第三者にどのように伝えるかという手段を学ぶことなのであろう。講義を通じて、「自分は何者であるか」ということを自ら振り返り、歩んできた自分自身の道程を味わうことができることに感謝する時間でもある。

今日一日が良い一日となりますように、悲しみと困難、不安に向き合っている方に希望がありますように。良い週末をお過ごしください。新しく始まる一週間が皆様にとって豊かな一週間でありますように。

2020年10月2日  竹内上人

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