目白からの便り

5S3定(ごえすさんてい)と操典(そうてん) その二

明日の早朝、伊勢に出立する予定があり、少し早めにこの週報を書いている。松本市内も梅雨時期の為か湿度が高く、深夜でも蒸し暑さを感じる。

「5S3定(ごえすさんてい)」活動について、先週から触れている。5S3定の意味については、ホームページにバックナンバーを掲載しているので、先週のコラムを見ていただければと思う。先週の最終節より、・・・『環境リサイクルの仕事、彼らは、新型コロナウイルスの時も休むことなく、私たちの生活インフラを生命の危険と向き合いながら懸命に守ってくれていた、まさに必要不可欠な職業人であるEssential Worker (エッセンシャル ワーカー)なのである。 (次週に続く)』・・・

構内見学から戻って全体発表会の中でコメントを最後に求められた。私はここで、『みなさんの仕事は、生活のライフラインを死守するエッセンシャル ワーカーであると感じた』と伝えた。ホワイトボードに、その言葉を書いた後、少し躊躇しEssential Contributor(エッセンシャル コントリビュター) と書き直した。コントリビューターとは「貢献者」の意で、危険とも向き合い、肉体的にも負担がかかる仕事であることをどう表現したらいいか戸惑い、「社会生活に必要不可欠な職業的貢献者」という表現に言い直した。あまねく職業には価値があることは言うまでもないが、こうした直接的に私たちの生活のライフラインを守る仕事には特異な感覚を私はもつ。

もう一つ私がお伝えしたのは、「操典(そうてん)」という言葉である。「操典」とは明治時代からの軍事用語であるが、各兵種の教育、戦闘方法の指導教育・運用書である。司馬遼太郎氏の「坂の上の雲」という書籍でこの言葉を知った。1885年(明治17年)に来日した独陸軍のメッケル(Klemens Wilhelm Jacob Meckel)参謀少佐の影響を強く受けた日本陸軍が取り入れた歩兵運用教書である。環境リサイクルの仕事は危険と隣り合わせである。ひとつの行為自体が磨き上げられていなければ事故につながる。それゆえ、一つ一つの作業所作の練度の高さが求められる。そうしたことから、この職業の作業標準の語感は「操典」に近い印象をもった。

仕事には仕事を通じて出来上がった、芸事などで使われる「道(どう)」と言うものがあると思う。その形(かた)を突き詰めていく練達のプロセス自体が技術や知識を極めるだけでなく精神も鍛練する。それぞれの職業における「道」を究めるということ自体が、凡庸な日常の中で、仕事におけるロマンを感じさせる。私にとって、仕事や職業についてとても大切なことを気付かせてくれた成果発表会であった。

今日一日が良い一日となりますように、悲しみと困難、不安に向き合っている方に希望がありますように。良い週末をお過ごしください。新しく始まる一週間が皆様にとって豊かな一週間でありますように。

2020年7月10日  竹内上人

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