目白からの便り

留学生の就労意識 日本的経営システムからの突破口

都内の早朝は、澄み切った青空が広がっている。肌に感じる気温は、秋の深まりをより一層感じられるが、強い日の日差しは気持ちを励ます。

東北大学では、留学生を対象としたキャリアの実践講座を日本の経営システムを学びながら、前期・後期で継続して行っている。この講座はインターンシップ希望者のみならず、日本で就労したいという意思がある留学生が履修している。内容が就活に役立つ為なのか日本人学生も数名交じって履修している。今週、講義の中で、日本の企業がなぜ、海外からの留学生の採用が拡大していかないかというテーマでグループディスカッションをした。私は彼らの答えに感心した。よくわかっているのである。

理由の上位には、どのグループも「短期的に出身国へ帰国してしまう心配」、「短期で他企業へ転職してしまうリスク」があげられていた。この心配は日本企業の人事担当者の共通の心配事でもある。3年から5年くらいで転職をされてしまうと、初期の人材育成投資が終わり、これから実践的な活躍をしてもらいたいというタイミングで貴重な人材を失うことになる。

逆の立場で視点を移すと、日本企業は昇給もなだらかなカーブを描く「職能給的な給与体系」で査定幅を拡大するものの基本的には変えていない。また、「職務給化」への意識は高まりつつあるものの機動的配置の利便性を支える職務転換(ジョブローテーション)時の給与設定の整合性に不都合が生じる懸念から踏み込めない。更に長期的な雇用慣行の労使双方の心理的契約(Life-time Commitment)から雇用調整時に起こる人材の過度な内部留保の硬直性からも社外の雇用流動化インフラの脆弱性から突破口を見いだせないでいる。職務価値や時価貢献度評価の要素を引き出す「役割給」的な色彩を反映しているのは、非組合員に該当する管理職クラスの給与グレードが主流で限定的でもある。そして、若年者の人材確保は「新卒一括採用、4月入社」で社内外において秩序が保たれている。

こうした日本企業の人事システムは今までの内部労働市場を基軸とした高度な労働生産性を確保する上では有効に機能してきており、現在もすべてを否定するべきものでもない。しかしながら、グローバルに雇用情報が公開され、SNSなどを通じてその実情が共有化される傾向が強まる現在において、20歳代後半から30歳前後で高度な就労意欲と高い自己効力感を期待する人材層に対しては、あまりにも魅力的に映らず、留学生のみならず、日本人学生にとってもダイナミックな成長の可能性の期待感を充足させない。

昨日、行った学習院大学の経営総論の講義でも、「終身雇用的な労働慣行」、「年功的な給与体系(職能給)」、「企業別組合」といった日本的経営と位置付けられる企業・組織か、その反対側に位置する企業・組織のどちらを就職先として選択したいか設問では、70%の日本学生が後者を選んだ。女子学生の比率も半数ほどいるのである。

大企業は、優秀な人材を新卒採用市場でも優位的に確保できているので切迫感は低い。だからこそ、今、中堅・中小企業はチャンスでもある。早く組織内部の様々な環境を多様化・多国籍化に対応できるようにしていくことだ。必ず良質な外国人が吸い寄せられる。日本人学生にも魅力的な存在になるだろう。その時、大企業よりグローバルな人材獲得競争では中堅・中小企業の方が優位に立つ。

今日一日が良い一日となりますように、深い悲しみと困難、不安に向き合っている方に希望がありますように。良い週末をお過ごしください。新しく始まる一週間が皆様にとって、豊かな一週間でありますように。

渋谷 表参道にて 竹内上人

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