目白からの便り

蚊取り線香から学ぶキャリアの希少性

8月に入ったと思うともう来週からはお盆にはいる。帰省の時期で故郷の実家に戻りゆっくり過ごされる方も多いと思う。お盆の時期、実家に戻ると蚊に悩まされるといった記憶が強い。しかしながら今年の夏は、都内にいても、松本の自宅にいる時も、あまりに暑いのかまだ蚊に刺された記憶がない。実家でもそうであって欲しいと願う。

私の実家は、愛知県の昔の地名でいう三河という地にある。三河の地も東と西に分かれ、現在、実家があるのは西三河になる。名古屋まで列車で40分ほどかかるところである。少し行くと港がある。海が近く、夏のこの時期は気温の高さに加えて、湿度も高いので、信州の気候に順応したわが身は、最初は悲鳴をあげるが、しばらくすると身体もそのじっとりとした空気になれてくるから不思議である。

実家の蚊よけは、相変わらず、香取線香である。我が家は伝統的に緑色のものを使い続けている。寝る時に火をつけ、朝まで煙を醸しだし、蚊を寄せ付けない。老夫婦の暮らしなので、電気式のものでもいいものかと思うが、やはり煙が出ないと効かないと信じているらしく頑なに変えない。この煙とにおいも年老いた両親には大切なのだ。銘柄も、子供のころに脳裏に焼き付いた「金鳥の夏、日本の夏」のものである。最近はめったにコマーシャルを見ないので、今も放映さえているか定かではない。

金鳥の蚊取り線香だが、これは登録商標であるようだ。生産会社は大日本除虫菊株式会社という。金鳥のシンボルマークに描かれている鶏は古の言葉の「鶏口となるも牛後となるなかれ」からとっているとのこと、小さな存在でも大きな組織に飲み込まれずに、特徴を出し先頭を目指し、必要とされ続ける存在になるのだという意味が込められている。

こうした企業戦略のみならず、個人のキャリアにおいても多数に埋没されない希少性が大切である。必要とされる価値に注意深く神経を割き、他に簡単に代替されない存在価値を探し出し、それを研ぎ澄ませる。大切なことは、自分本位になり過ぎないことである。生計を立てる上でキャリアが経済的取引関係における対価としての価値を求められる以上、その買手がいなければならない。個人の想いが基礎にありながら、キャリアの買手の購買意欲との調整を注意深く図ることが大切である。キャリアにもマーケットインの思想に基づく希少性を際立たせていく。

大学が夏休みに入るこの時期、企業研修を担当する機会も増える。その対象が管理職であっても、新入社員であっても「お客様(他者)を起点とした発想」の大切さを伝えようと試みる。リーダーシップ、コミュニケーション、チームビルディング、そこには必ず自分以外の存在との関係の中で成り立つものだからである。

今日一日が良い一日となりますように、深い悲しみと困難、不安に向き合っている方に希望がありますように。良い週末をお過ごしください。新しく始まる一週間が皆様にとって、豊かな一週間でありますように。

都内にて 竹内上人

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