目白からの便り

縄文時代の魅力と柔軟性のあるキャリア

連日の猛暑が続いている。暑さに加えて東京都内に湿度の高さは、亜熱帯の気候を感じさせる。ベトナムに出張に行っている知人から、東京よりハノイの方がはるかに過ごしやすいという便りが届く。松本で打ち合わせがある為、今週の週報を松本に向かう特急列車の中で書くことになった。

信州に入ると、八ヶ岳への登山口である美濃戸口から,茅野市街に続く街道沿い、標高が1000mほどに、尖石(とがりいし)遺跡という縄文時代の遺跡があり、そこに茅野市尖石縄文考古博物館がある。ここには、幼少期学んだ社会の教科書で覚えのある国宝の「縄文のビーナス」と平成26年に新たに国宝指定された「仮面の女神」という二つの土偶が保存、陳列されている。考古学にロマンを感じる方には、とっても魅力的な聖地でもある。

縄文時代は、私にとっても生活スタイルの観点からとても魅力的な時代である。その後の農耕文化が栄える弥生時代と比べて、狩猟が中心の縄文人は、定住せず、自由に居住地を移っていた。個人の所有感の意識が田畑を耕しだした弥生人と比較すると、希薄で自然と共生している感覚が強かったのだと思う。

縄文的な生き方ができればと、時々感じる。ニュースで凶悪な事件を知るたびに憂鬱になるのだが、そうした心が痛むような事件が、縄文時代は少なかったそうである。農耕文化が始まり、田畑の所有権が定まってきた弥生時代から、利権を巡っての事件などが発生するようになる。

日本は産業構造が大きく変わり、価値を生み出す産業軸が多様に変化し始めている。働き手もどこで、自らの力を発揮するのが最適なのかと考える時代でもある。弥生時代のように、その地にとどまり、価値を積み上げていくことも大切な観点でもあるが、恵みの可能性が多そうな機会にむけて積極的に移動していくことも大切な考え方でもある。副業・兼業の可能性も少しずつ高まってきている。労働を考える時に、一定のしがらみに縛られ過ぎずに、柔軟に活躍の場を選択する機会が多かった縄文的な働き方もキャリアを考える大切な価値観だと、はるか遠くの長い年月を経てきた「縄文のビーナス」のことを思い浮かべながら考えた。

実は、私は実物と対面したことがない。いつも「縄文のビーナス」と「仮面の女神」は、全国の企画展に招かれていて不在であった。出張中は、レプリカがその役割を担う。彼女たちも、この時代になっても定住せず、全国を飛び回って働いている。

今日一日が良い一日となりますように、深い悲しみと困難、不安に向き合っている方に希望がありますように。良い週末をお過ごしください。新しく始まる一週間が皆様にとって、豊かな一週間でありますように。

特急あずさの車中にて 竹内上人

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