目白からの便り

成績表と人事考課

この時間の都内は、まだ夜の余韻に包まれていて、天気がどうなるか予測できない。近くのコンビニにコーヒーを買い求める為、外に出たが少し風がつよい。

今週は、大学の秋季課程の学生の成績評価をつけるのにあれこれ悩みながらの一週間であった。シラバスの授業計画書では、出席率25%、レポートと小テスト25%、授業での参画度25%、プレゼン発表・テスト25%という構成で成績をつけることにしている。

授業の構成がグループワークに基本をおいているので「授業での参画度」を成績に組み込んでいる。どのようにグループワークに積極的にかかわったのか、まとめ上げる時に傍観者にならずに協力的なスタンスを維持し続けることができたか、結果を急ぐあまりに乱暴なまとめ方をしていなかったかなどという観点で観察する。ひとつの講座では新たに360度評価も組み込んでみた。民間企業の評価でいうところの「プロセスの評価」である。

日本企業で「人事考課」を行う企業は少なくなり、直接的に「基本給・本給査定」や「賞与査定」を行うことが一般的である。専門的な話になるのだが、「人事考課」とは、能力、業績、勤務態度・意欲などを客観的に数値化したものであり半期ごとに直接処遇に連動させずに人物評価を行う。その数値データは、昇給や賞与査定、昇進・昇格の判断根拠に連動させる。人を評価する仕組みが二階建てになる。人事の流行は「人事考課」は廃止し直接、MBO(Management By Objectives) といわれる目標管理に基づき結果成果に着眼した評価や、「役割評価」という職責をかなり細かく定義・市場価格と整合をとり「職務」、「職責」や「成果」をベースに評価することが一般的になっている。さらにノーレイティング(No Rating)といった評価システムを現場マネジメントの裁量に完全委譲し個人の行動を直接的、瞬間的に評価する動きが加速している。

企業のブランドは最終的には「私」を超え、「組織という公(おおやけ)」のために上司が見ていないところでも職業倫理に基づき勤勉に働く、良質な人の集団が存在するか否かである。小売りの現場においても、良質なお客様は、かならず販売員の心根の透明性を見抜くものである。そうした行動の評価を丁寧に読み解き続けることは手間のかかることであり、苦労を伴う。
それぞれの企業が社員ひとりひとりの一挙手一投足に関心をもち続けることが、たたずまいのある職場や売り場を創出する。社員も顧客もその空間のもつ空気感を瞬時に感じ取り企業の値踏みをする。企業トップのみならず、人をマネジメントする立場にある者の発する言葉や立ち居振る舞いが、働くひとり一人のその一日の所作の質感を左右する。

組織が「働く人」を評価する意味をよく考えてみたい。公平に評価し、適正に賃金を配分するということが基本ではあるが、「働く人」を勇気づけ、仕事に対するモチベーションと倫理観を堅持し、前を向いてもらうように支援していくというメッセージを伝える貴重な場でもある。人事の役割は重い。

今日一日が良い一日となりますように、特に困難に向き合っている方に希望がありますように。良い週末をお過ごしください。新しく始まる一週間が皆様にとって、豊かな一週間でありますように。

都内にて 竹内上人

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