今朝の都内は、青い空と薄い雲が入交り、気温も低い。都内の住処のベランダから高層の建物を仰ぎ見る。建物の持つ頑強な建築美を感じる。高い建物をみると山に登りたいという衝動にかられる。
先日、北アルプスの蝶ヶ岳(標高2,677m)に登った。常念山脈の南側に位置する。その日の松本・安曇野平の空は雲で覆われてた。登山届を提出する三俣の登山口では、霧雨になっていたので、合羽を着こんで登り始めた。しばらく、霧の樹林帯を登り続けたが、中腹までいくと、次第に霧の中から抜け出すことができ、ちょうど雲海の上、雲ひとつない空間に出る。
下から見ている山頂の様子と実際に雲を突き抜けての登りきってしまうと、こんなにも風景が異なるものなのかと、そのギャップに驚く。
10月からスタートした横浜国大と東北大学での秋季講座の中で、IQ(知能指数)の反対側に対峙するEQ(Emotional Intelligence Quotient:感情の能力) にベースにおき、リーダーシップやチームビルディングについて学ぶ講座がある。いつも留学生が9割を占めるのだが、今年は日本人の履修生がかなり多いのに驚く。
EQを8つに分解した感情のコンピテンシー(能力)について、自らの行動パターンをレビューしながら自分のものにしていくプログラムである。最初に学ぶ感情能力が、「感情リテラシー( Enhance Emotional Literacy) という感情について、単純な感情状態から複雑なものまで、正確に認識し、解釈する力である。
人間関係において、自分の感情を適切にコントロールにしていくかは大切な要件である。自分の感情や相手の感情が、その時どのような状態になっているかを、冷静に、正確に把握できるか。自分の感情が意識下に置かれないまま、まさに雲の中にあり、状況がわからないような状態で、立ち居ふるまうことの危うさを避けるための能力である。
山に登るときの判断も非常に難しいものであるが、山の中腹の雲の上にはどのような空間が存在しているのかということを冷静に見極めることによって安全な登山ができる。登山では、地図を読む力である読図力や天気図を読みこむ力があれば、適切な判断・行動をとれる。感情においても同じである。自分自身の感情の地形図に、移り変わる感情の天気図を重ねて、瞬時に正しく読み取る力(感情読解力:リテラシー)があれば、良好な人間関係を楽しむことができる。自分自身の感情を冷静に知ること、職場の同僚や上司、お客様との接客の場面において、感情の変化を適切に知る力は、次の正しい行動をとる上での指針になる。
キャリアコンサルタントの仕事をしていると、難しい人間関係に対峙し、自らを傷つけるほど深く悩む方が多くなってきていることを痛感する。底が見えない困難向き合う時、少しでも、その霧の中を抜け出す力を伝えていきたいと願う。
今日一日が良い一日となりますように、悲しみや困難に向き合っている方に励ましがありますように。また、良い週末をお過ごしください。新しく始まる一週間が皆様にとって、豊かな一週間でありますように。
都内にて 竹内上人