目白からの便り

天秤(てんびん)が示すキャリアの選択

早朝の都内は暑い雲に覆われ、雨と強い風に包まれている。台風の接近とともに大雨になる予報である。大きな被害もなく、恵みの雨になればと願う。

『人生は天秤みたいなものさ、
過去という小皿に重みがかかると、
未来という小皿は自然と天に届く』

乱雑に食卓の上に積み上げられた高校生になる長女のノートの表紙に書かれた詩に目が留まる。
「誰の詩?」、「わからない、でもいいでしょう」、「いいね」、中学生の時から、ノートの表紙に書き移してきているという。

“Future Leader Incubation Program” 前職の人事部に在籍していた時に、次世代の経営幹部を育成するプログラムの設計と運営に5年ほどかかわった。自分自身が経営に関して、また経営者のあり様について、深く考える時間であった。
ある時、日本で重鎮と評される経営学者との会話の中で、深く脳裏に刻印された言葉がある。「竹内君、経営戦略は漠然とした願望ではなく、過去の積み重ねの延長線上にあるものだし、あるべきものなんだよ」と。
経営戦略は、将来のなりたい姿、到達目標を描いて、そこに向かう為の変革シナリオではないのかと考えていた自分にとってこの言葉の意味を理解するまでかなりの時間を要した。

また、人事屋の私のとってこの助言は、キャリアデザインと経営戦略の策定プロセスは、同じ道程を踏まえるべきだと考えるようになったきっかけにもなった。

若いころは、確かに小皿におかれた、試練と艱難を乗り越えた経験の重りは軽いであろう、ただ、歳を積み上げるごとにその重さは増していく、その「重り」の粒子のひと粒に願望も溶け込まれている。その「重り」の積み重ねにより、自らが選ばなければならない方向性は自ずと明らかになる。その選択がもっとも自然の理に適ってるのだ。

この「重り」を濃密な経験を通じて形成したい。良質な葛藤の塊にしたい。空洞だらけの軽石だと、もう一方の小皿が天に向かない。

今日一日が良い一日となりますように、特に悲しみや困難に向き合っている方に励ましがありますように。また、良い週末をお過ごしください。新しく始まる一週間が皆様にとって、豊かな一週間でありますように。

(お知らせ)
都内の本社オフィスを九段から表参道に移転しました。9月から本格稼働の予定で整備しています。青山学院大学の向かい側、青山通り沿いになります。

都内にて 竹内上人

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