目白からの便り

年年歳歳花相似たり、歳歳年年人同じからず:経験から学習する

みなさま

驚くほど暖かな一週間であった。都内の桜もすでに満開を過ぎ、新しい芽が息吹きだしている。桜並木の歩道に掲げられた商店街の桜まつりの案内版も来週からの予告であり、今年の桜の開花が例年以上に早く到来したことを語っている。

都内で咲き誇る桜をぼんやりと眺めていると毎年のように思い返す風景と言葉がある。
私は、今から35年以上前、京都にある大学に入学した。新しく始まる学生生活に期待していたし、初めて経験する独り暮らしの不安もあったと思う。
入学して間もなく、新入生を対象にした説明会に参加する為、修学院離宮の近くにある関西セミナーハウスという研修施設を訪れていた。そこには咲き誇る桜を有する素晴らしい庭があった。

そして、桜を見ると必ず思い出す言葉がある。
「年年歳歳花相似たり、歳歳年年人同じからず」(唐代詩人 劉希夷 りゅう きい )の詩の一句である。

恩師である中條毅先生(現同志社大学名誉教授)から新入生に語られた言葉であった。今でも覚えているのが驚きでもある。先生が私たちに語りかけたかったことは、毎年毎年、桜の花は変わらず咲き、その美しい姿を示してくれるが、人は年とともに老いを重ねていくものである。凡庸としていると瞬く間に人の一生は老いにたどり着いてしまうから、与えられた一日一日、一時一時を大切に生きなさい。ということであったと思う。

人は、多くの苦難と試練に向き合う、その時の向き合い方が大切である。できれば避けて通りたい出来事から、何かを教訓として学び続ける人と、記憶から抹殺する人では、同じ出来事でも人間としての風味風合いに違いが生じる。人が向き合う苦難や試練は、大切な将来の機会に繋がっていると考えると希望ももてる。

キャリア理論で示される 「経験から学習する」 である。

歳を重ねて変わっていくのであれば、目まぐるしくわが身に起こる出来事を、願わくはすべからく滋養として取り込み、しなやかに生きる糧にしたい。今年も変わらず美しく咲き誇る桜を眺めながら想う。

今日一日が良い一日となりますように、特に悲しみや困難に向き合っている方に励ましがありますように。また、良い週末をお過ごしください。新しく始まる一週間が皆様にとって、豊かな一週間でありますように。

都内にて 竹内上人

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