目白からの便り

「リーダーシップ」と「フォローワーシップ」

みなさま

早朝、美ケ原の山頂の空は、今まで見たことがないほどアーティスティックな朝焼けになっていた。赤いキャンパスに横縞の細い筋雲が描かれた背景に、王が頭の山頂が圧倒的な存在感で支えている。こうした景色を眺めながら、今週の出来ごとに思いを寄せる。

今週、ひとつの講座で、授業の時間が過ぎてもいつも出席する留学生の生徒がいない。何故なのかと少し心配になりながらも、そうか、今日はハロウィンなのだと気づく。きっと渋谷かどこかの街に繰り出し、日本で独特に昇華したイベントを楽しもうとしているのかと思いし、微笑ましくも感じ、授業を進める。

この講義は、昨年よりスタートした「チームビルディング(Team Building)」を主題に置いた講座になる。日本企業、外資系企業の事例をベースにどのような組織マネジメントが「働く人たち」のモチベ—ションを高めていくのかをそれぞれ企業の仕組みを紐解きながら考え、最終的に自身が経営者になり、理想の組織を構築する場合、どのような組織体制やシステムを組み入れるのがもっとも適しているかを考案する構成にしている。

昨年度で、講義の基本シナリオは完成させたものの、10月よりスタートして、1ケ月が経ち、自分の中でまだ講座の完成度に物足りなさを感じながらの講義が続いている。教える立場の迷いが、生徒の授業に対するモチベーションにマイナスの影響を与えてしまい、渋谷のスクランブル交差点のハロウィンの誘惑に凌駕されてしまったのかと反省もする。

普段のように講義が終わり、学生が退室した後、教材の整理をしていると、欠席した生徒たちが教室にひょこり姿を現す。大学の構内に居たのかと少し驚く。話を聞いてみると、履修必須科目の取得の指定が変更され、私の講座は来年にするよう指示されたとのこと、そのことをわざわざ伝えにきたのだ。この授業を楽しみにしているので、来年は必ず履修したいということを話しに来た。その瞬間、自分は彼らに受け入れられているのかと安心する。

組織が信頼関係に基づく良質なコミュニティになるには、健全なリーダーシップだけでなく、相互に尊重しあうフォローワーシップも大切な要素になる。良いリーダーになろうという意識は持ちやすいが、よいフォローワーになろうという気づきは失いがちである。相互のちょっとした気遣いが、上司と部下の信頼関係を強固にしていく。
今回は、生徒の思いがけない気遣いが、私自身にエネルギーを与えてくれた。

大学の近くのバス停にとぼとぼと向かう道すがら、欠席したと思った留学たちが、ハロウインを楽しむ為に街に繰り出してしまったのかと大きな思い違いをした自分の浅はかさを反省する。立派な生徒たちに自分も支えられていることに嬉しさもこみあげる。無条件の信頼が信頼を呼び寄せ、よいチームになるのだということを改めて深く胸に刻む。相手を思いやり、言動に移すことは、実はなかなか面倒である。それでも、勇気を振り絞り、面倒がらずに、ちょっとした相手を気遣う言葉をかけるこを心掛けることが、良質な人間関係の基礎となる。

今日一日が良い一日となりますように、特に悲しみや困難に向き合っている方に励ましがありますように。また、良い週末をお過ごしください。新しく始まる一週間が皆様にとって、豊かな一週間でありますように。

松本にて 竹内上人

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