目白からの便り

明日は明日の風が吹く

朝、眠たい目をこすりながら、まだ書いていないコラムを書かなければと起きだす。今週は久しぶりに一週間以上長野県の松本市の自宅に滞在している。日中は都内と変わらず暑いのだが、朝夕、特に5時ころの早朝は松本の中心部であっても、ひんやりした外気に触れることができる。やっぱり信州は涼しい。美ヶ原高原の王ケ頭(標高2,034m)の空を眺めると、くっきりとその稜線が浮かび上がる。寝起きの感覚は抜けないのだが、しばし見とれてしまう。空気中の湿度が少ない分、透明感がある。

先週の週末にお世話になった前職の人事部の先輩が会社の重責を離れるということで、諏訪湖のほとりにある居酒屋でその方を囲む会に出席した。この方は人事を長く経験され私自身も多くを教わった。温厚で多くの方に親しまれる方であった。私が前職を離職する時に心底心配され、熱心に慰留をしてくれた。人事屋の鏡のような方である。人事屋としてこうありたいと思った。

囲む会では、多くの昔懐かしい方々が出席されていた。皆さんそれぞれ年齢を重ねているが、雰囲気は昔と変わらない。人事で共通した経験を思い出すだけでなく、足しげく通った飲み屋のことや、今もその店はあるのかないのかなど話題は尽きなかった。当時は部長も含めて全員で仮装して楽しんだ忘年会のことも思い出深い。職場の忘年会は一大イベントであった。日にちが迫ってくると仕事以上にその準備に忙しくなる。私も女装してエアロビスをキャサリンさんと(もちろん日本人の女性であるが職場でそう呼ばれていた)、踊ったことを思い出した。あのような芸当は今では想像もつかない。5歳蔵上の男性の先輩のセーラー服姿は、さすがにすさまじかった。記憶から消し去ることができない衝撃だった。

久しぶりに再会した上司の顔を見て、この方が良く口にしていた言葉がよみがえる。「明日は明日の風が吹く」人事の仕事をしているとどうしようもなく解決できない問題に直面することがしばしばある。なんとか解決する場合もあるし、解決しないまま問題自体が風化していくこともある。努力し尽くしても問題を却って悪化させることもある。なんともやっかいな問題がこうも多いのだろうと記憶がよみがえる。

今でも解決しそうにない問題に囲まれながら、時間がたつことによって、自然に鎮静化していくこともあるのであろう。身体の力を抜いて物事に向き合うことが大切なのだ。職場の飲み会の二次会で行きつけの小さなスナックで歌った定番、テレサ・テンの「時の流れに身をまかせ」の楽曲が脳裏に繰り返し奏でられる。流れに抗うことを避け、時に従い、力を抜くと新しい可能性に気づくかもしれない。

そして、囲む会のお世話になった主役の先輩は、お酒に乱れることもなく、二次会になるとにいつも背筋を伸ばしたまま気持ちよさそうに眠っていたことを思い出す。

今日一日が良い一日となりますように、悲しみと困難、不安に向き合っている方に希望がありますように。良い週末をお過ごしください。新しく始まる一週間が皆様にとって豊かな一週間でありますように。

2025年7月25日

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