目白からの便り

底が見えない困難に向き合う時の方位磁石としてのEQ(心の知能指数)

松本は山に囲まれた盆地である。東はこの地の最高峰の王ヶ頭(2,034m)を抱える美ヶ原高原、北の方角には、白馬の山々、その白馬山麓とつながり西方面に連なる北アルプスの勇ましい山岳が松本安曇野平を堅牢に囲い自然災害から人々を守っている。そしてその山々から潤沢に清らかな水が、松本安曇野平に注ぎ込まれる。豊富な清水により、良質なわさびが育てられ、街中の用水路に岩魚が泳ぐ。登山の時期には、多くの登山者たちが松本駅に降り立つ。最近は目立って外国人の登山者も多い。そうした登山の出で立ちの人々を見ると、自分自身も無性に山に登りたくなる。

 

私の大学の講座の中で、IQ(知能指数)の反対側に対峙するEQ(Emotional Intelligence Quotient:感情の能力) にベースにおき、リーダーシップやチームビルディングについて学ぶ講座がある。感情をコンピテンシー(能力)と位置づけ、自らの行動パターンをレビューしながら自分のものにしていくプログラムである。

 

人間関係において、自分の感情を適切にコントロールにしていくかは大切な要件である。自分の感情や相手の感情が、その時どのような状態になっているかを、冷静に、正確に把握できるか。自分の感情が意識下に置かれないまま、まさに雲の中にあり、状況がわからないような状態で、立ち居ふるまうことの危うさを避けるための能力である。

 

山に登るときの判断も非常に難しいものであるが、山の中腹の雲の上にはどのような空間が存在しているのかということを冷静に見極めることによって安全な登山ができる。登山では、地図を読む力である読図力や天気図を読みこむ力があれば、適切な判断・行動をとれる。感情においても同じである。自分自身の感情の地形図に、移り変わる感情の天気図を重ねて、瞬時に正しく読み取る力(感情読解力:リテラシー)があれば、良好な人間関係を楽しむことができる。自分自身の感情を冷静に知ること、職場の同僚や上司、お客様との接客の場面において、感情の変化を適切に知る力は、次の正しい行動をとる上での指針になる。

 

キャリアコンサルタントの仕事をしていると、難しい人間関係に対峙し、自らを傷つけるほど深く悩む方が多くなってきていることを痛感する。底が見えない困難に向き合う時、少しでも、その霧の中を抜け出す力を伝えていきたいと願う。

 

今日一日が良い一日となりますように、悲しみと困難、不安に向き合っている方に希望がありますように。良い週末をお過ごしください。新しく始まる一週間が皆様にとって豊かな一週間でありますように。

 

2023年10月13日  竹内上人

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