企業における人材育成のプロセスの中で特に会社が大切にしている価値観を新しく入ってきた新入社員などにどのように伝えていくかということに苦心する人事担当者も多いのではないだろうか。私が今まで企業研修で行ってきた研修の題材の一つに就業規則の読み込みがある。多くの会社で入社後、就業規則を読み返す機会はあまりにも少ない。もしかすると、一度も読まないまま退職してしまう社員もいるだろう。
しかしながら就業規則には創業以来、長年積み上げてきた創業者の想いがつづられていることが多い。就業規則の最初のページに掲載されている「総則」や、「序文」、または「第一条」などをぜひ読み返してほしい。創業当時、また創業間もない時代の創業者の想いがその中に刻み込まれている。社会環境の変化に伴って就業規則などの社内規定は都度改定されるが、こうした最初の部分に記述された文言に手を加える人事担当者はいない。
企業の創業時における「核心」ともいえる文言を、新しく入ってきた新入社員研修の題材の一つにすることは、企業文化の理解を深める良い契機になる。たとへば、少し格調高く書かれていて難解な表現の「序文」や「総則」の部分を若い年代層が普段使用している言葉で口語訳にしてみることや、その言葉の意味を伝えるための寸劇を脚本させ演じさせてみるのも良い。更には最近の若年層はメディア活用のリテラシーが高いので、3分程度の短編動画を製作させるのもお勧めである。きっと彼らの脳裏に忘れられない体験になるだろう。こうしたプロセスを少人数の演習形式で実施させ、集団単位で競い合わせ、経営層の方の体験談を加えた解説を加えることによって、組織エンゲージメントも強固になるのであろう。
7月1日は多くの会社で、試用期間が終了して本採用の示達式を予定しているであろう。同じようなタイミングで、本採用研修を実施する企業もあるかと思う。この時期、プログラムが確定しておらず思案している人事担当者がいるのであれば、こうした就業規則を題材とした研修プログラムもぜひ試してみてほしい。ちょうど会社のしくみや仕事の理解が進み、慣れてきたタイミングには絶好の機会でもある。
私も同様に大学で映像を活用した講義をいくつか試みている。その一つに、「EQ (Emotional Intelligence Quotient心の知能指数)」の講座がある。主として海外からの留学生を対象にした講座で実施している。4月から進めてきているので、クラスの学生間の交流もだいぶ馴染んできている。留学生が中心だが、日本人の学生も少人数だが交じっていて、異文化、言葉の壁を乗り越えて積極的に演習学習に取り組んでいる姿が頼もしい。
映像完成後の映写会(発表会:プレゼンテーション)では、㈰上映前の監督・主演俳優・女優の挨拶、㈪上映、㈫上映後の映像解説とプレゼンテーションは続く。毎回どのような内容になるのか期待が半分、不安が半分であるが、結果は予想をいつも私の想像を上回る。学生たちの力量の高さに驚愕を覚える。講義でそれぞれのEQの概念を座学で学ぶことも大切だが、基本概念を理解した学生たちが、その内容を自らのアイデアで映像という作品に創り上げていく学習効果も価値がある。
30年以上前、学生時代のゼミ活動で、映像ではないが演劇を通じて、専攻で学んだことを舞台化した経験がある。「能力主義人事制度導入」に対する労使交渉をテーマにした。労使のそれぞれの視点で理解が深まったし、芝居を創り上げる過程で人間的な関係ができた。私は脚本担当だった、労働組合の委員長役の同級生は上場企業の人事部長、青年部長役の先輩は、朝ドラや大河ドラマにも頻繁に出演する俳優になった。
今日一日が良い一日となりますように、悲しみと困難、不安に向き合っている方に希望がありますように。良い週末をお過ごしください。新しく始まる一週間が皆様にとって豊かな一週間でありますように。
2025年6月6日
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