今週の月曜日、学習院大学の創立百周年記念会館で同窓会である学習院桜友会が主催する講演会で、彬子(あきこ)女王殿下から「英国で学ぶ日本」というテーマでの講演会があり参加した。彬子様は学習院大学文学部史学科を卒業され、オックスフォード大学マートン・カレッジに留学、博士号の学位を取得された。「ひげの殿下」と多くの国民の方々に親しまれた寛仁親王(ともひとしんのう)を親にもつことからか、とても親しみやすい雰囲気がある人柄であった。現在は、三笠宮家の当主でもある。
皇族としての品格をもちながらも、その場の環境を機敏に全身に吸収し、誠実でありながらやわらかな仕草は、講演の後の質疑応答の受け答えからも感じられた。お立場がお立場だけにお気持ち的には常に気遣いをしていなければならない環境だと察するばかりである。こうしたお立場でも自らの役割に心を配り、優れた立ち居振る舞いのたたずまいを保ちつづけることに頭が下がる。
親しみやすさを感じさせる情緒的感受性の卓越したコミュニケーション力はどのようなプロセスから身に着けられるのか考えさせられる。過去、海外流失してしまった日本の伝統的美術・芸術作品を異国の環境から研究するアプローチも興味深いのだが、英国での日常的な生活からの話題もユニークで、その柔らかな機知に富んだ話し方に引き込まれる。「英国紅茶はミルクが先か、紅茶が先か」や、「スコーンにつけるクロテッドクリームとジャムの塗り方の順番」の論争など、お決まりの話題も、彼女の日常目線での体験談を交えて語る姿に引き込まれる。
10月から大学も2学期がスタートし、11月中旬はちょうど折り返しの時期にさしかかる。2学期では、「自分株式会社の主体者としてのキャリアデザイン論」と「EQ(心の知能指数)とリーダーシップ」にフォーカスをあてて講義を構成する。いくつかの大学で講義をするようになってもう10年が経過する。例年、1年生の最初の講義は彼らの不安そうな顔が痛いほど感じられる。2学期になっても年齢的には18歳〜19歳なのだから緊張の中で初めての人間関係の中で学習をスタートし、なんとか新しい環境の中で適合しようと取り繕う最中なのであろう。大学やアルバイト先での友人や先輩たちとうまくコミュニケーションがとれているか気になるところでもある。
真にコミュニケーションが成立するためには、信頼関係の構築が前提になる。いくら良質な情報をもっていても信頼関係が不在であるとコミュニケーションは成立しない。それでは、信頼関係を構築する上での前提はなにかというと、自分自身をできる限り正直に、誠実に相手にさらけ出すことから始まるのだと思う。人は得体のしれないものには警戒するのが常である。となると、コミュニケ—ションの技術を身に着ける最初の課題は「自分は何者か」ということを自分自身が正しく理解し、それを第三者の感情の変化を機敏に察知しながら、どう伝えるかという手段を学ぶことなのであろう。講義の場は、私にとっても「自分は何者であるか」ということを学生に伝えながら、自らを振り返り、歩んできた自分自身の道程を味わうことができる大切な時間でもある。
今日一日が良い一日となりますように、悲しみと困難、不安に向き合っている方に希望がありますように。良い週末をお過ごしください。新しく始まる一週間が皆様にとって豊かな一週間でありますように。
2025年11月14日
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