McKEN 木鶏会

McKEN 木鶏会 Mokkei-No.387号-栗山英樹

『苦しい時に、それを不満に思うか、ありがたいと思うか。その違いは大きいと思います』

野球の場合は、『運』イコール人としての徳という要素が強く、僕はそれをどのように選手たちに伝えていくのかということを日々考えています。

栗山英樹
(元プロ野球選手・監督、東京オリンピック野球日本代表監督)

所感:
栗山氏のこの言葉に接し、改めて「運とは何か」を考えさせられる。世の中では成功した人を見て「あの人は運が良かった」と語られることが少なくない。しかし、多くの優れた経営者や指導者の話を聞くほどに、彼らは運を単なる偶然とは捉えていないことに気付く。むしろ、運とはその人が積み重ねてきた徳の現れであり、生き方の結果としてもたらされるものだと考えているように思う。

キャリア理論の分野において、故ジョン・D・クルンボルツ博士は「計画的偶発性理論(Planned Happenstance Theory)」を提唱した。その理論では、人生やキャリアを左右する重要な出来事の多くは偶然によってもたらされる一方で、その偶然を機会へと変える力は日頃の準備や姿勢によって培われると説いている。
人生には、誰にでも等しく機会が訪れる。しかし、その機会に気付く人と見過ごす人がいる。また、人との出会いの中で見いだされる人と、そうでない人がいる。その違いは能力や才能の差だけではない。日々誠実に努力を重ね、謙虚な心を持ち、周囲のために行動している人のもとには、自然と新たな縁や機会が集まってくるのである。

振り返れば、私自身のキャリアにおいても、多くの転機は偶然の出会いや一言の声掛けから始まっている。しかし、それらは決して無秩序な偶然ではなかったのである。自分の歩む道は若いころからおぼろげながら決まっていた。視界が悪い人生だったが、自分の中にある方位磁石は機能していたのかと思う。そして、人との縁を大切にしながら歩んできた結果として訪れた必然であったように思う。

運を求める前に、自らの徳を磨く。目先の損得ではなく、人として正しいと思う行動を積み重ねる。その先にこそ、人との縁が生まれ、思いも寄らぬ機会が開かれていく。運とは待つものではなく、自らの生き方によって招き寄せるものである。私がキャリアデザインの講座で最後に学生へ伝えるのも、このことである。人生における幸運とは、偶然の産物ではない。日々の努力と謙虚な姿勢、そして他者への貢献を積み重ねた先に現れる必然の姿なのである。

今日一日が良い一日となりますように、悲しみと困難、不安に向き合っている方に希望がありますように。良い週末をお過ごしください。新しく始まる一週間が皆様にとって豊かな一週間でありますように。

2026年10月30日 

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