毎年この時期になると、大学の秋季課程(後期課程)も今週で終了し成績表をつけることが習慣化される。妻も高校教諭なので、採点や通知表づくりに苦労しているのだがこの時期は同じような心境になる。
秋季課程で私の担当する日本的経営、日本の人事制度、キャリア設計に関する講座は、留学生が履修する科目が多い。会社の人事評価も同じだが、定量的・定性的に評価をする難しさを痛感する。出席率は、もともとも数値化されているデータだが、出席率が高ければよいのかと、もちろんそうではない。できるだけ多面的にと提出レポート、授業での参画度なども加えて評価の客観性を試みる。しかしながら、学生に対して、なぜ評価をするのか、何を評価項目とすべきか、どのような評価プロセスを取り入れるべきか毎回悩みが尽きない。
企業の人事評価はその答えが明快である。評価の人事的な狙いは組織目標に適合する人材を長期的に育成、動機付けすることに重きが置かれている。実際の職場では、上司の主観的な判断の影響があるのも現実であるが、企業人事担当の心意気は、もう少し異なるところにある。業績評価に対する公平感(fairness)は組織倫理の観点から外せない視点だが、それ以上に賃金体系の設計やその運用の意図の拠り所は長期的な事業戦略の実現に寄与する人的資源開発におかれている。また組織価値の品質を維持する企業理念の誠実な実践者を励まし続けるところにある。
企業における人事屋として実務を担っていた自分の大学における役割について考える。将来、日本の組織に多数入り込んでいく留学生達が、どうすれば組織適合能力を身につけることができるのかという命題に対し授業設計を行い、その習得度を評価体系に内在化させていくことにその答えがあるのだと。4月から始まる春季の講義設計に取り組むモチベーションも刺激される。
企業経営の現場では、こうした「評価」だけにとどまらず、最近は、定年延長、在宅勤務の比重の高まり、副業・兼業の拡充、非正規雇用の就労者数の増加と多国籍雇用の避けられない現実に従来の人事制度の見直しの切迫度も高まっている。「採用・配置・育成・評価・処遇・退職」、人事にまつわる様々なプロセスで、ダイナミックな企業イノベーションを誘発し、働くひとり一人に高いモチベーションをどう感じてもらうか、それぞれの企業固有の、また創業者のかけがえのない企業文化や価値観を伝達する人事の役割の期待は一層高まる。
今日一日が良い一日となりますように、悲しみと困難、不安に向き合っている方に希望がありますように。良い週末をお過ごしください。新しく始まる一週間が皆様にとって豊かな一週間でありますように。
2022年2月4日 竹内上人