目白からの便り

遠くまで行きたければ、みんなで行け

出入国在留管理庁の資料では、昨年、日本に母国での難を逃れて入国する難民認定申請者数は3,936人。コロナ禍の影響で前年に比べ6,439人(約62%)減少。審査請求数は2,573人で,前年に比べ2,557人(約50%)減少。また、難民認定手続の結果,在留を認められた外国人は91人。その内訳は,難民と認定した外国人が47人,人道的な配慮を理由に在留を認めた外国人が44人。在留を認められた人数比率はわずか4%と、多くの方が安心した居場所を築けないでいる。

先日、国際教育フォーラムのパネルディスカッションでご一緒した方で、日本で難民申請をして日常を過ごしている方の就労支援をしているNPOの団体の代表者の女性が私の表参道のオフィスを小さな、かわいいお子さんを連れて訪ねてきてくれた。私自身が日本での難民の実情を知り、気づかされることが多い時間であった。

難民を人材として考えてみること。今までに私の人事の思想の中にはその枠組みは存在していなかった。そのキャリアを聞くと驚く。とても多様な経験を持つ材の宝庫でもある。母国で自分の正義のために声を上げ、逆境を乗り越え日本に渡ってくる。抜群の人間力と忍耐力、優しさを持っているとのだと彼女は話す。難民の出身国は80%がアフリカ大陸出身で、そのうち50%が大学を卒業している。医師や弁護士、プログラマーなど専門性や社会的地位の高い職歴の人も多い。彼ら、彼女らは働く意欲のみならず社会や他者に貢献したいという意識や姿勢が強いということも経緯を伺うと理解できる。

難民の方々の「働く」を阻む壁が3つあるとのこと、日本語の壁、難民という言葉自体が持つ偏見からくる社会的レッテル、三つめは、在留資格が「特定活動」という区分で6ケ月更新をしなくてはならない不安定な制約環境。彼女の話を聞きながら、人事屋として感じたのは、就労機会の確保と安定化する可能性があるのではないかという直観である。働きたいという思いと、高い倫理観をもつ人材は企業側の少しの意識のハードルを薄める働きかけと、その後押しとして就労の安定化をする伴走者としての日本の企業で豊富な経験を持つシニア人材との組み合わせで貴重な人材になるように思えた。働き手としての組織内での共生は、既存の社員に生きること、働くことに対する姿勢に力強い良質なメッセージを届けてくれるモチベーターになるに違いない。

頂いた活動雑誌の冒頭に彼女の想いがアフリカのことわざと合わせて引用されていた。「早く行きたければひとりで行け、遠くまで行きたければ、みんなで行け」。少子高齢化と経済のグローバル化が急速に進む日本。将来母国に帰ることがあっても、こうした人たちとの共生は、必ずなにかの価値と可能性を企業や組織にもたらしてくれると思う。

今日一日が良い一日となりますように、悲しみと困難、不安に向き合っている方に希望がありますように。良い週末をお過ごしください。新しく始まる一週間が皆様にとって豊かな一週間でありますように。

2021年9月10日  竹内上人

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