目白からの便り

人間関係のつくり方

早朝の松本は、グレーの厚い雲がすぐ近くまで降り、今日一日の天気が荒れそうなことを予感させる。九州や中国地方では既にかなりの降雨量があることが予測されるので大きな災害にならない事を祈るばかりである。

先週のコラム「できない中で、できることを探す」で思いもかけず多くの方からメッセージをいただく。読んでいただいている方にはおわかりかと思うが、私のコラムは自分自身の日記のようなものでもあり、困難に直面した時にその気持ちを吐露する時が多くある。また、キャリアコンサルタントの仕事を通じ、相手の心に届かない助言で申し訳ない気持ちになり、その反動が言葉に現れてしまうことも多い。

この4月から今までとは異なる人たちと協業作業を進め、新しい人間関係に戸惑い思っている方も多いのかと思う。社内事情により、希望しない職場に転属を命じられ従来の環境との相違の適合に苦労している方も多いのだろう。勉強すること、仕事をすること、新しい人と上手くやって行くこと、これらすべて今までにない機能を活用することになる。当然のことながらストレスを感じるであろう。

新しい世界には新しい世界の作法や流儀がある。特に新卒で企業に招き入れられた方々で、人事や経営者の方から、組織の古い慣習を若い感性で打破してほしいというメッセージとともに新しい組織に招き入れられた方も多いのかと思う。一方で今まで組織にいた人にとってはさまざまな問題意識も感じながら積み上げられてきた仕事のやり方や流儀を身にまとって自己の存在意義を、その作法の繰り返しを通じて確認し、誇りにしているところもある。また中途採用で経験豊富な方が自らの職場に配属されたという事実だけで自己の組織貢献を否定されたような気持になる方もいる。新しい方を迎え入れる時、受け入れ側も緊張するのである。 表面的には穏やかでも、お互いが言うに言えない微妙な緊張関係を持って時間を過ごす時期でもある。

職場への適応や人間関係づくりは、今日できる最良の方法をとり続けるということの積み重ねでしかないようにも思う。それによってうまくいく場合もあるし、うまくいかない場合もある。うまくいかないからといって落胆せず、その時は少し距離を置いて間を取ることだ。時間をおくことも大切な処方箋でもある。少し傷ついてしまった精神の傷跡も時間をかけることによってその人の風味になり、魅力に転嫁する。また、人間の弱さを感じられる強い人になる貴重な機会となる。感受性の豊かさは人間的成長の機会に恵まれていることでもあるのだから。

今日一日が良い一日となりますように、悲しみと困難、不安に向き合っている方に希望がありますように。良い週末をお過ごしください。新しく始まる一週間が皆様にとって豊かな一週間でありますように。

2021年6月4日  竹内上人

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