目白からの便り

5S(ごえす)が語りかけること

出張に先立ち、書棚に並んでいる幾冊か連用日記の中で30年前の時期のそれを読み返すと、茶色くなった一枚の紙片が落ちた。何だろうと見てみると「5S」と表題に記されている。製造業で働く人にとっては、その実践度は少々不安な面もあるが、馴染みの言葉でもある。そこにはこう書かれてある。

1.顧客の価値観や好みによって、多品種少量生産を前提としなければ、企業は生き残っていけず、そのためにも5Sにより作業の効率化の基礎とする。 2.この中で最も重要なものは、「躾(しつけ)」である。命令によって服従させることなく、5Sの重要性を心から理解し、自然に実践できることである。『職場での挨拶が大きな声で、元気が良いか』、『全員がにこにこ顔で眼が輝いているか』などの企業の体質づくりに直結する。

5Sとは、5つの象徴化された行為の表現をローマ字で示しその頭文字をとったものだ。こうした時に活躍するローマ字の効力は大きい。幾つかの系統的方式展開もありながら生活の中に定着する。私たちに日常生活に馴染みのあるローマ字はヘボン式ローマ字であろう。江戸時代末期、1859年に来日したアメリカ人牧師で、医師でもあったジェームス・カーティス・ヘボン(James Curtis Hepburn)により考案された。彼はその後、東京港区白金台にキリスト教プロテスタント系の精神に基づく明治学院大学を創設(1986年)する。私は、小学校の教室で海外の憧憬と少しの高揚感でローマ字の字体を綴った。

1S整理(Seiri):いるものと、いらないものをハッキリ分けて、いらないものを捨てる
2S.整頓(Seiton):いるものを使いやすいようにきちんと置き、誰にでもわかるように明示する
3S清掃(Seisou):つねに清掃をし、きれいにする
4S清潔(Seiketsu):整理・整頓・清掃の3つのSを維持する
5S躾 (Shitsuke):決められたことを、いつも正しく守る習慣をつける

5Sの神髄は単に美化することではない。仕事をしやすい環境を、自分の為だけでなく、同僚の為にも、次の後継者の為にも、お客様の為にも、仕事の意味や価値を伝達するための心配りである。各々の行為には、基準となる思想や理念が不可欠である。人との付き合い方も体裁的で断片的な関係ではなく、良質な思いやりの等価交換を心掛ける。仕事での新たな企画立案で、職場や家庭の人間関係で、顧客との関係で、何を奉仕すべきか、何で貢献すべきか、どう信頼を得るか、5Sから学ぶ気づきは多い。

今日一日が良い一日となりますように、悲しみと困難、不安に向き合っている方に希望がありますように。良い週末をお過ごしください。新しく始まる一週間が皆様にとって豊かな一週間でありますように。

竹内 上人

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