今週は、大学の秋季課程の学生の成績評価をつけるのにあれこれ悩みながらの一週間であり、その作業は今日も続いている。今年は例年とは異なり、コロナ禍が続く中で、一部の大学を除きオンラインを基本とした講義であった。学生によっては通信環境が十分ではなく指定時間帯にアクセスができない学生もいた。後期になるとその操作性には慣れてきたが実情はそれほど楽観もできないとも感じた。生活費をアルバイトで補完をしていた学生にとり、馴染みやすい収入源が途絶えたことは、様々な面で影響を及ぼしていたのかと心が痛む。そうしたメッセージを受信した場合は人間的な思慮が必要だと感じた。
シラバスという授業計画書では、①出席率、②レポート、③授業での参画度、④プレゼン発表という構成で成績を考えた。授業の構成がグループワークに基本をおいているので③の「授業での参画度」を組み込んでいる。グループワークに積極的だったか、まとめ上げる時に傍観者にならずに協力的なスタンスを維持したか、結果を急ぐあまりに乱暴なまとめ方をしていなかったかなどという観点で観察してきた。民間企業の人事評価でいうところの「プロセスの評価」である。そうなると、①の出席率は出勤率、②のレポートや③のプレゼンテーションは実績・成果に該当する。
日系の伝統的な製造業で人事部長で活躍している同窓の友人と会った。今も人事考課をやっているという。専門的になるが、「人事考課」とは、能力、業績、勤務態度・意欲を客観的に数値化したものである。その数値データは、昇給や賞与査定、昇進・昇格に反映させる。人を評価する仕組みが二階建てになる。人事の主流は「人事考課」は廃止し、MBO(目標管理) といわれる期間成果に着眼した評価や、「役割給」という職責を定義し、ゆるやかな市場価格との整合をとった体系に移行しつつある。もちろん、圧倒的には伝統的な職能給を堅守している会社が多い。その中でも「態度」や「意欲」などの「全人格的評価」に目を向け、複合的な構造を残し、丁寧に人材評価をしている会社があるのかと感銘をうけた。
企業のブランドは最終的には「私」を超え、「組織という公(おおやけ)」のために上司が見ていないところでも職業倫理に基づき勤勉に働く、良質な人の集団が存在するか否かである。小売りの現場においても、良質なお客様は、かならず販売員の心の透明性を見抜くものである。そうした、たたずまいのある組織の実現に真剣に向き合っている人事の方に会うと大いに勇気づけられる。組織が「働く人」を評価する意味をよく考えてみたい。公平に評価し、適正に賃金を配分するということが基本ではあるが、評価は、人に組織が深い関心をもち、「働く人」を勇気づけ、仕事に対するモチベーションを促し、前を向いてもらうように支援していくというメッセージを伝える貴重な場でもある。
今日一日が良い一日となりますように、悲しみと困難、不安に向き合っている方に希望がありますように。良い週末をお過ごしください。新しく始まる一週間が皆様にとって豊かな一週間でありますように。
2021年2月12日 竹内上人