目白からの便り

150年の変化

都内はまぶしい陽の光に包まれて、今日の天気のすこぶる快適なことを予感させる。

今週はいくつかの雇用に関する会議の場に出席することが多かった。会議での意見のやりとりを聞きながら想いをめぐらす。日本の雇用環境をデータ(総務省)でみると失業率は年平均で2016年、17年、18年の3か年で、3.1%、2.8%、2.4%(米国同時期比較 4.9%,4.4%,3.9%)で好調に推移。一方で非正規雇用比率は37.5%,37.5%,37.3%(対全就業者)の水準で横ばい。正規雇用と非正規雇用とでの賃金格差は、1.3倍(30-34歳時点)、1.9倍(50-59歳)の差となり開きは大きい。世代を超えた影響として、少しデータが前のものになるが、子供の相対的貧困率は16.3%(2012年)で年率増加傾向。特にひとり親世帯の相対的貧困率は54.6%の水準(厚生労働省 国民生活基礎調査)という状況となっている。

給与水準の正規・非正規の差は「職能給」に準拠する日本的雇用システムの影響が大きい。失業率が良好な状態が続いていることはとても明るい気持ちにさせるが、経営者の視点では、人材確保が困難になっていることにもつながるので緊急の課題でもある。特に中堅、中小規模企業にとって人材確保は経営の最重要課題でもある。人事屋としては雇用慣行のバランスをとりつつも労使の都合も配慮しつつ少しずつでも「職務給」的な雇用システムへの移行を試み労働力確保と就業機会の機動性と可能性の拡充を高めなければと考える。

一方で、雇用の現場における不安定化、世代を超えた労働力再生産機能の劣化が深刻な状況になりつつあることにも留意をしなければならない。こうした状態が長く続くと、ひとり一人の働く人の日常生活を想像するに、さすがに日本の強みである人的資源競争力の優位性にも見劣りが出てくるという危機感を感じる。

大政奉還をした年は、1867年である。現在から約150年前の出来事である。この間、日本の人口は3,300万人から1億2,000万人に急激に増加した。その反動に今直面している。幾多の困難に直面しながらも、資本主義と民主主義を希求してきた時間でもある。豊かな環境を社会構造的に得てきた半面、この期間に徐々に高まってきた労働コストと年金・医療・地域行政維持のための社会保障費の拡大スピードに、付加価値の増殖の速度が追いつかなくなってきたことも、雇用現場に厳しい現実が問われた背景でもある。

社会インフラのコストを抑制することは、家計のやりくりと同様なかなか難しい、低コストで維持できる効率性ある循環型社会の構築を意識しながらも、積極的に付加価値を増やすことを考え続けなければならない。労働資源の将来成長に向けた機動的で且つ多様性ある最適配置の環境整備は急務である。

迫りつつある労働力の量と質の構造の変化に対して、産学官の連携した役割の期待は大きいが、家庭や職場において、将来を見据えて一人ひとりが日々の環境を効率的にできる小さな取り組みや心がけはいくつもあるように思える

今日一日が良い一日となりますように、困難に向き合っている方に希望がありますように。良い週末をお過ごしください。新しく始まる一週間が皆様にとって、豊かな一週間でありますように。

都内にて 竹内上人

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