目白からの便り

成績表と人事評価

みなさま

都内は早朝から充分すぎる水分がまとわりつく朝を迎えている。今日も熱風と湿度と格闘する一日となるであろう。

今年の夏は予定が重なってしまったこともあり、講座をもっている2つの大学の春季課程の採点に着手するのが遅れてしまった。大学の事務局の方には大変な迷惑をかけてしまっている。妻は高校教諭なので、採点や通知表づくりに悪戦苦闘してる様子を無責任に眺めていたが、自分が担当すると難しい。
私の講義はキャリアデザインの講座を除くと、チームで様々なワークショップを行いながら課題の理解を深めていくプロセスの為、よく生徒を観察しなければ、個人の評価は判断しがたいという悩みがある。

会社の人事評価も同じだが、人に対して定量的・定性的に評価をする難しさを痛感する。出席率や小テストは、数値化されているデータだが客観的な評価のプロセスの精度を高めるだけでいいのかという漠然とした悩みが取り除けない。なぜ評価をするのか、目的に合致した評価項目や評価プロセスをどのように取り入れるべきかの設計が難しい。

一方で会社の人事評価はその答えが明快である。会社の評価の人事的な狙いは組織目標に適合する人材を長期的に育成、誘導することにその重きが置かれている。実際の職場では、個人の成果判断や,言葉を選ばず実態を述べるとすると、上司部下の人間的組み合わせによる恣意性が残ってしまうことも現実である。
しかし、多くの企業で働く人事屋の心意気は、そうした現場の実情を超えたところにある。公平感(fairness)は組織倫理の観点から外せない視点だが、それ以上に賃金体系の設計やその運用の意図の拠り所は長期的な事業戦略の実現に寄与する人的資源開発にある。また組織価値や企業ブランドのクオリティを高める実践者を励まし続けるところにある。人事には、将来に向かってのメッセージが織り込まれなければならない。

企業で長年にわたり人事屋として実務を担っていた自分の大学における提供価値は、日本の組織にこれから参入する学生達が、どうすれば組織適合能力を身につけ、ひとり一人が活き活きと活躍できるのかという命題に対して、授業設計を行い、その習得度を評価体系に内在化させていくことにその答えがあるのだと思う。

横浜国大の私の講座の生徒の幾人かは、都内のクライアント企業の人事の方の好意により、インターンシップで働く機会を得られている。10月からは、東北大学でも留学生のインターンシップを推進する新しい試みの講座もスタートする。親しい人事の方に留学生の就労機会の可能性を頼んでいきたいと思う。暑さで燃焼不良をおこしつつあった秋季の授業設計に取り組むモチベーションも始動し始めた。

今日一日が良い一日となりますように、悲しみや困難に向き合っている方に励ましがありますように。また、良い週末をお過ごしください。新しく始まる一週間が皆様にとって、豊かな一週間でありますように。

九段にて 竹内上人

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