キャリアの作り方

三つ子の魂百まで 新人のキャリア形成

5月の連休が終わり、そろそろ今年の4月に配属された新入社員の若者たちも、キャリアの最初の舞台となる職場に配属され、新しいスーツに身を包みながら、あるいは会社から支給された制服を自分なりに工夫して着こなしながら元気に毎日を過ごしているのかと想像する。多くの会社で、新入社員には指導するための先輩社員や上司、あるいはベテランの鬼軍曹のような教官が配置され、彼らの成長のスタートを伴走していることであろう。

自らの新入社員の頃を振り返ってみると、その時に出会った先輩社員や上司、全く仕事のつながりは無いのだが、気にかけてくれた部長や課長がいたことを思い出す。彼らは、様々な成長のための手助けと、助言を私に与えてくれたことを思い出す。時には、延々と自身の仕事の成功談を熱く語ってくれることもあったのだが、そうした入社して間もないときの記憶は今でも鮮明に覚えている。

会社に入って間もない頃、社会や経済のことをきちんと身につけなければと思い、日本経済新聞を購読することにし、気になる記事を切り取り、コクヨ製の茶色い表紙のスクラップブックにその切り抜き記事を丁寧に貼り付け、赤色と青色が一緒になった鉛筆で大切な部分に棒線を引きながら理解しようと格闘していたことを思い出す。

私は始業時間より1時間半ほど早く出勤することを心がけていた。配属された総務部の職場は、様々な部門が一緒に配置された工場のようなだだっ広いワンフロアの出入り口の一角にあり、まだ出勤する人もほとんどいない空間を独り占めしながら、自分の席でそうしたスクラップブックの製作や単語ノート作りに没頭していた。その当時はパソコンもモニターもなく、机の上には隣の人と共有の電話機が1つ置かれていただけであった。

ある日のお昼休みの時に仕事とは直接的には関係ない生産管理部の部長が私を自席に呼び出し「Jカーブ効果とはどういうことなのか説明してみてくれ」と突然質問された。ワンフロアだったので、その人がいつも部下を怒鳴り散らしている怖い上司だったと言う印象しかなかった。人相も般若のようだった。ビクビクしながら部長席の前に置かれたスチール製の丸椅子に腰を下ろした。その質問を受ける前までは、「何かヘマでもやらかしたのか」と気が気ではなかった。

私が入社した年は1985年のブラザ合意をきっかけに為替相場が大きく変動し、企業の業績も為替の動きに影響を受けていた時である。切り抜きの記事でよく保存していた「経済教室」や「やさしい経済学」でそのトピックスがあったので、生産管理部長の質問には容易に答えることができた。そして、おっかない部長からひどく褒められたことを覚えている。彼は、私に「今まで何人かの人に同じ質問をしたが、竹内くんの答えが最も理解できる」とひきつったような笑顔で褒めてくれた。40年近く前のこの光景を今でも覚えていると言う事は、相当な衝撃が自分の中にあったのだと思う。

「三つ子の魂百まで」という諺があるが、新しい環境の中の最初の3年間はその後のキャリアの行く末を定めるとても大切な時間だと思う。新入社員の方には今からでも遅くないから精一杯仕事と向き合ってもらいたいと思うし、彼らを指導する立場の先輩や、上司の方には、最大限の教育的な問いかけと経験を投げかけ、励ましていただければと願う。キャリアのスタートのこの時期、戸惑いながらも新しい環境に自分を適合させようと格闘している若者には、良質な言葉や体験は、きっと職業人としての人格形成に大きな影響を与えることになるのだから。

今日一日が良い一日となりますように、悲しみと困難、不安に向き合っている方に希望がありますように。良い週末をお過ごしください。新しく始まる一週間が皆様にとって豊かな一週間でありますように。

2024年5月24日  竹内上人

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