『全世界が一つの舞台、人間みな役者にほかならない、おのおの出があり、引っ込みがあり、一生の間、様々な役を演じる』、この言葉は、ウィリアム・シェイクスピアの戯曲『お気に召すまま』の一節である。原文では「All the world’s a stage, And all the men and women merely players; They have their exits and their entrances; And one man in his time plays many parts,」と書き記されている。
良い役もあるし、なかなか苦労する役もある。人生の中で、そうした山谷を私達は仕事だけでなく、生活においても、そこに関わる全ての人間関係においても体験する。絶好調と感じている時に突然、失意のどん底に陥ったりする。また反対に絶望の恐怖の中で恐れ佇んでいる時に思わぬ支援者が手を差し伸べて事態が好転することもある。
人生には様々な役割を演じなければならない時期があり、子どもとして、学校の先輩として、学生として、労働者、親として、友人として、上司として、市民として、様々な役割を、それぞれのふさわしい年代において演じることが求められる。
こうした人生における役割の変遷を、アメリカの教育学者のドナルド・E・スーパー博士は「ライフ・キャリアレインボー」というキャリア理論で紹介している。私の大学の講義でも紹介する理論の一つである。スーパー博士は、こうした役割を子ども、学生、余暇人、市民、労働者、配偶者、専業主婦、親、の8つにライフロール(人生の役割)として体系化した。専業主婦という言葉は現在では適切ではないかもしれないが、いずれにしても仕事というキャリアと並行して人生においてもいくつかの役割の人事発令書をいただくことになる。
こうした様々な人生の人事発令書は、人によって受け止め方は異なるが、相互依存で成り立つ人間社会においては避けられない役割でもある。私達は、こうした人生の役割の人事発令の辞令を受けた時、できるだけ前向きにその世界に接することが大切だと思う。それらは、仕事でのキャリアに制約を強いる発令書になるかもしれないが、長いスパンで人生という時間を考えると、一つひとつの出来事が次の舞台に向けての意味のあるものになるだろう。
俳優の高倉健さんは、自分の人生を振り返って、「出逢った方々からの想いにこたえようと、ひたすらにもがき続けてきた」と語っている。まさに一期一会の瞬間に全神経を集中して向き合うことによって、人間的な成長に磨きがかかるのであろう。
スーパー博士と同じように人生の役割を春夏秋冬として描いたポール・トゥルニエの著書『人生の四季』(The Seasons of Life)がある。彼は人生の各段階を四季に例えて描いている。人生においてどの季節も大切であると。そして、私達は生涯を通じてだけでなく、短いサイクルでも四季を経験する。私の好きな映画に『チャンス(原題:Being There)1979年』がある。この物語でも同じように四季のサイクルの価値を語ってくれる。今日が冬でも丁寧に土を耕し養生させる。明日の春のための大切な準備の時間となる。
今日一日が良い一日となりますように、悲しみと困難、不安に向き合っている方に希望がありますように。良い週末をお過ごしください。新しく始まる一週間が皆様にとって豊かな一週間でありますように。
2024年11月15日
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