目白からの便り

留学生との交流から学ぶ原理原則(プリンシプル)

都内は昨日から冷たい雨が降り続いている。数日前の春のような暖かさが再び来ないかと願う。

昨日は、都内郊外にあるセミナー施設にいた。昨年12月から日本人の学生、社会人に向けての海外大学院進学を促すためのプログラムを文部科学省の委託事業の取り組みをしてきている。留学を目指す日本人学生と日本国内で学ぶ留学生との交流研修を通じて、海外留学に関する個々人の目的意識を深化させるプログラムとなっている。留学上の手続きを共有することはもちろんだが、なぜ留学するかの本質的な問いに自分の固有の考えを持ち、応えられるように促す。

横浜国立大学、大阪大学、東洋大学と3回にわたって行い、昨日からはその最終プログラムの合宿形式の講座となる。プログラム開発と展開に情熱を傾けている先生の努力により実現した。
教室に集まった参加学生の一人ひとりと話をする。なぜ海外の大学院をチャレンジするのかについての想いの強さに聞き手も勇気づけられる。

現在、日本には約30万人の留学生がいる。大学(院)で学ぶ留学生が約半数の15万人ほどで、年々増加している。留学生就労の問題もあるがこれだけ多くの留学生が日本で学んでいる環境をうまく活用できれば日本のグローバル化、広い意味でのダイバーシティー(多様化)の対応力向上にとってはとても貴重な国家的なリソースに転換できる。

異なる文化や異なる言語の人たちとのコミュニケーションを行うことによって日本の学生も国内にいながら多様化のリアルに接することができる。留学生にとってもより密接な日本人との接合点を通じて日本を深く学ぶことにもなるであろう。

異なる価値観や異なる背景と思った方と接する事はとても大きな刺激になる。その中で自分自身の大切にすべき価値観というものが確立してくるのであろう。同質性の中ではなかなか気づかなかったオリジナリティーも浮かび上がってくる。そして、それぞれの自我やオリジナルな原理原則が研ぎ澄まされる。

原理原則(プリンシプル)という言葉からは、白洲次郎氏がいつも脳裏を通り過ぎる。白洲氏は、戦後処理に吉田茂首相の側近として、GHQとの折衝に携わるのであるが、GHQ側からの印象は、「従順ならざる唯一の日本人」と称された人物である。白洲氏は、物事の判断基準に彼自身の定めたプリンシプル(Principle)を大切にしていた。 プリンシプルとは、「原理・原則」、「公理」、「行動の基準」、「根本方針」の意である。

時として、周囲の空気に迎合して、平凡なる日常生活を過ごす身からは、なかなか厳しい指摘である。同質性がゆえに生じるあいまいな空気の中で、時流に流され判断して思慮に欠ける行動をとってしまうことが幾度かある。その折々に自分自身のプリンシプルの脆弱に後悔する。

異なる価値観の人たちと、楽しく真面目に深く交流することで、若い世代にそれぞれの判断の基軸となる原理原則が確立されていくことになる。そしてそれは多様化に質高く対峙する社会資本としてもとても大切なような気がする。

今日一日が良い一日となりますように、困難に向き合っている方に希望がありますように。良い週末をお過ごしください。新しく始まる一週間が皆様にとって、豊かな一週間でありますように。
都内にて 竹内上人

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